もう一度 恋をするなら
偶然と必然と突然と
◇◆◇
「看護師長、ちょっと良いですか?」
五階ナースステーション奥に看護師長室がある。確か五十代といっていただろうか。眼鏡をかけたちょっと厳しい雰囲気の五階看護師長である。雰囲気とは裏腹に気遣いのある人で、以前に同じ部署で働いていたころ笹井先生と同じくお世話になった。ノックをしてから引戸を開けると、ライティングデスクに座る看護師長がいた。
「今井さん? どうぞ入って」
「失礼します」
パソコン業務をしていたらしい師長さんは、眼鏡を外して軽く目頭を揉み解している。老眼が結構キツいらしい。
「何かあった?」
「いえ、ちょっとお伺いしたいことが。あの、中川さんから師長にお話上がってきてませんか?」
尋ねると、師長は小さく首をかしげる。
「中川さんから? ……いえ、何も聞いてないけど」
「……そうですか」
やっぱりか、と思わずため息が落ちた。
以前、私の咄嗟の発言から中川さんが思いついた、製薬会社に依頼する看護師への医薬品勉強会のことである。あれから中川さんからはちっとも音沙汰がなく、声をかけようにも仕事中は忙しくてすれ違ったりシフトが合わなかったりで聞く機会を失っていた。
……さて、どっちだろうなあ。
師長にまだ相談せずに進めているか(相談が遅れているだけの場合も含め)、もしくは、まったく進んでいないか。彼女の場合、どう考えても弓木くんが目当ての様子だったから、頓挫している可能性の方が高いと感じた。
多分、連絡先聞こうとしても仕事の番号しか教えられなかったり、そもそも提案すらしてないかもしれない。
「何? 中川さんと何かあったの?」
「あ。いえ、実は……」
中川さんが進める気がないのなら、それはそれでもったいない。まだ相談できてないだけなら、問題になる前に私から先に話を通しておこうかと思った。
簡単にことのあらましを説明し、さらに先日あった出来事も理由としてひとつ付け加える。
「看護師もきちんと勉強しているというわかりやすい実績を作れば、医師からの信頼度も高くなるのではないかと期待しています。看護師にも、言われるままに薬品を扱うのではなく勉強する機会があればと思うのです。その許可をいただきたくて。中川さんが先導してくださる話になっています」
「看護師長、ちょっと良いですか?」
五階ナースステーション奥に看護師長室がある。確か五十代といっていただろうか。眼鏡をかけたちょっと厳しい雰囲気の五階看護師長である。雰囲気とは裏腹に気遣いのある人で、以前に同じ部署で働いていたころ笹井先生と同じくお世話になった。ノックをしてから引戸を開けると、ライティングデスクに座る看護師長がいた。
「今井さん? どうぞ入って」
「失礼します」
パソコン業務をしていたらしい師長さんは、眼鏡を外して軽く目頭を揉み解している。老眼が結構キツいらしい。
「何かあった?」
「いえ、ちょっとお伺いしたいことが。あの、中川さんから師長にお話上がってきてませんか?」
尋ねると、師長は小さく首をかしげる。
「中川さんから? ……いえ、何も聞いてないけど」
「……そうですか」
やっぱりか、と思わずため息が落ちた。
以前、私の咄嗟の発言から中川さんが思いついた、製薬会社に依頼する看護師への医薬品勉強会のことである。あれから中川さんからはちっとも音沙汰がなく、声をかけようにも仕事中は忙しくてすれ違ったりシフトが合わなかったりで聞く機会を失っていた。
……さて、どっちだろうなあ。
師長にまだ相談せずに進めているか(相談が遅れているだけの場合も含め)、もしくは、まったく進んでいないか。彼女の場合、どう考えても弓木くんが目当ての様子だったから、頓挫している可能性の方が高いと感じた。
多分、連絡先聞こうとしても仕事の番号しか教えられなかったり、そもそも提案すらしてないかもしれない。
「何? 中川さんと何かあったの?」
「あ。いえ、実は……」
中川さんが進める気がないのなら、それはそれでもったいない。まだ相談できてないだけなら、問題になる前に私から先に話を通しておこうかと思った。
簡単にことのあらましを説明し、さらに先日あった出来事も理由としてひとつ付け加える。
「看護師もきちんと勉強しているというわかりやすい実績を作れば、医師からの信頼度も高くなるのではないかと期待しています。看護師にも、言われるままに薬品を扱うのではなく勉強する機会があればと思うのです。その許可をいただきたくて。中川さんが先導してくださる話になっています」