もう一度 恋をするなら
「莉子!」
「久しぶり、燈子ちゃあん! 来てくれて嬉しい!」
「来るに決まってるよ。招待ありがとうございます。結婚おめでとう」
「ふふ、うん。ありがとう。なんか照れくさいねぇ」

 手を取り合って久しぶりの再会を喜んだあと、重いドレスを着ていては大変だろうからともう一度座ってもらった。私も壁際にあった丸椅子を引っ張ってきてすぐ近くに座った。

「旦那さんは?」
「もうひとつの控室。幹事してくれてる友人とね、今最終打ち合わせしてるの」
「後でご挨拶させてね。……莉子、ほんとにきれいだね。幸せそうでよかった」
「うん……なんかもう、ずっと事実婚みたいなものだったんだけどね。それでいっかと思ってたんだけど、やっぱりね。ちゃんとプロポーズしてくれたら……すごくうれしかったの」
「そりゃそうだよ。大学で知り合ったんだっけ?」
「うん。付き合ったのは社会人になってからなんだけどね、大学の時はこうなるなんて全然思ってなかったなー」
「あはは。そうだったんだ」

 普段からおっとりとして可愛らしい彼女だが、今日は本当に幸せいっぱいで、照れながら旦那さんの話をする表情は一層輝いて、花が咲いたような笑顔だった。
 それから十分ほど話をしていると、旦那さんが来て挨拶をさせてもらった。後は開宴までの準備があるだろうからと控室を出ようとしてふと思い出す。

「そういえば莉子、早めに来てほしいってなんだったの? なにか手伝うことある?」

 受付が足りないとか何か事情があるのかと思ったが、そうではないらしい。

「大丈夫! 燈子は受付済ませてテーブルに着いてて。久しぶりに会うから、ゆっくり話したかっただけなの。あ、それと。もしかしたら、ちょっとびっくりすることがあるかもしれない」

 その言葉に私はひやりとする。受付とかならいいが、パーティ最中に即興とか歌うとかそういうのは苦手なのだ。

「え、何? 余興? サプライズ? 私はできたら目立たないとこで静かにしときたいけど」
「あはは! そういうとこ燈子らしいよね。大丈夫よ目立つとかじゃないけど、今は内緒。楽しみにしててね」

 莉子はいたずらっ子のように笑ってひらひらと手を振る。私は意味がわからないままだったが、そのまま控室を出るしかなかった。


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