もう一度 恋をするなら
 会場に行くと、もうちらほらと招待客が座っていた。受付で渡されたグリーティングカードに書かれた番号を頼りに席を探す。見つけた場所は六人掛けの円テーブルで、新郎新婦の座る席に一番近いところだった。
 隣にすでに女性がひとり座っていて互いに挨拶をしたが、全然知らない人だ。隣の席にいる男性はその女性の彼氏で、新郎の高校時代の友人らしい。

 ぐるりと他のテーブルに着く人たちに視線を向ける。小学校からの友人もふたり来ると聞いたのだけど、子供の頃の記憶しかないので今会ってもわかるかどうか自信はなかった。
 ほとんどの席が埋まって、知り合い同士は雑談を交わして開宴を待っている。その頃になっても私の左隣は空席だった。
 カトラリーはセッティングされているので、急な欠席かと思ったが開演五分前になってその人はやってきた。
 私は呆気にとられて、椅子に座ったまま左隣に立つ男性を見上げる。

「……弓木、さん?」

 なんで? なんで彼がここに?
 さっぱりわからない。

 頭の中がハテナマークでいっぱいの私と同じく驚いたのか、彼も目を見開いていた。だけど案外すぐに表情を整え席につく。

「お疲れ様です、今井さん」
「あ……お疲れ様です」

 呆然としつつも、軽く頭を下げて返事をする。彼はすぐに反対隣に座る男性へと顔を向け「久しぶり」と挨拶を交わしていた。会話の内容を聞くに、このテーブルはどうやら新郎の高校時代の友人が集められているらしい。

 なんでそのテーブルに私が? というか、莉子の旦那さんの高校の同級生が弓木くん? 全然聞いてないけど?
 ていうか弓木くんいつも突然現れるのなんで? 神出鬼没すぎない?

 ひとしきり頭の中で疑問を並べ立てたあと、はっと気がついた。莉子が言っていたのは、おそらくこの弓木くんのことではないかと。

 莉子!? なんで!? わざわざサプライズなの!?

 会場に音楽が流れ出して、割れんばかりの拍手の中を新郎新婦が入場してくる。混乱していた私は周囲から一拍遅れて拍手でふたりを迎える。

「莉子ってば……もう……」

 幸せそうな莉子の姿を見ていると、私の疑問は後回しにして今はふたりを祝うしかないと気持ちを切り替えた。


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