[慶智の王子・西園寺京の物語]ラブストーリーは一夜の過ちから始まる〜アラフォー男と三十路女の拗らせ恋愛〜
一方で松島主任は、さっきから携帯を操作していた。

「……あっ。見つけた」

次の瞬間、彼女の目が据わる。

「はっ! 突き止めてやったわよ! 必要な証拠、全部そろった」

小さく舌打ちしながら、画面をこちらに向ける。

「小宮ちゃんには悪いけど、こんな男と別れられて正解。こいつ、相当なクズよ」



松島主任は研二のSNSアカウントを突き止め、投稿された写真やコメントを次々と保存していった。

さらに『麗華(れいか)』という女性のアカウントまで辿り着き、二人が1年以上関係を続けていた痕跡を集めていく。

特に目を引いたのは、昨日投稿された写真だった。奪われた婚約指輪の写真に、信じがたいメッセージが添えられている。

『ついに婚約破棄を言い渡し、指輪も奪ってやった。あいつにはもう必要ない。これを売って、真実の愛の麗華ちゃんに新しい指輪を贈る』

……言葉が出なかった。

悲しいと言うより、ただ呆れている。

研二って、こんなにも常識のない人間だったっけ?

それに、麗華って。



画面に映る女性を見て、胸の奥が難破船のように、重い。

ミルクティーカラーのロングヘア、手入れされたネイル、トレンドを押さえた服装。男性社員からもてはやされていた、あの子。

去年、新卒で営業2課に配属され、研二が教育担当になってからだ。

終業後、別の課の私に押し付けられていた仕事。きっと彼女が処理できなかった分だったのだろう。彼女のできない仕事を私に回し、二人は堂々と関係を続けていた。

あの、妙に挑発的だった彼女の態度も、今なら理解できる。

関わらなければいい。
私は気にしていない。

そう思い込もうとしていただけだった。



元同期で友人の恵子は、何度も言っていた。

『研二はやめておきな』

『真帆子は、絶対苦労する』

『あいつ、浮気してると思う』

1年以上も裏切られていたのに、気づかなかったなんて。

なんて、バカなんだろう……私。



私が呆然としている間にも、二人の主任たちは淡々と次の手を考えていた。
< 11 / 70 >

この作品をシェア

pagetop