[慶智の王子・西園寺京の物語]ラブストーリーは一夜の過ちから始まる〜アラフォー男と三十路女の拗らせ恋愛〜
こうして主任たちの、『小宮ちゃんを正社員にして、伊集院先生にあの二人を成敗してもらう』という計画は、あの日の昼休み直後から速やかに動き始めた。



1週間後、高橋主任の尽力で正社員試験と面接を受けることができ、話は驚くほどとんとん拍子に進んだ。

仕事内容は今までと変わらない。ただ、肩書きが『契約』から『正社員』に変わっただけ。



顧問弁護士である伊集院先生との面会も、松島主任の手配で実現した。

お姉さん主任二人が同席してくれたおかげで、心強かった。

高橋主任が撮影してくれた薬指の怪我の写真。松島主任が集めてくれた、婚約破棄に至るまでの証拠。

それらを確認した伊集院先生は、即座に言った。

「これは、慰謝料が発生する案件ですね。正式にお引き受けします」

もう研二にも、麗華にも、二度と会いたくない。伊集院先生が全てを引き受けてくれることに、胸を撫で下ろす。



診断書は整形外科医の近衛彰人(このえ・あきと)先生が作成し、後日デジタルで伊集院先生へ送信された。

なんと、近衛先生と伊集院先生は幼馴染で親友。さらに高橋主任とも、慶智大学の同級生だという。

世間は、本当に狭い。

「彼らには、きちんと制裁を受けてもらいます。逃げても、私がツテを使って必ず見つけ出し、支払わせますから」

柔らかな笑顔とは裏腹に、伊集院先生の瞳の奥には、底知れない闇が潜んでいた。

この人を敵に回してはいけない。
味方で、本当によかった。



その後、両親と恵子に、ようやく電話を入れることができた。

婚約破棄の経緯。
浮気の発覚。
主任たちの協力と、弁護士に任せたこと。
そして、大企業で正社員になれたこと。

すべて話すと、両親は心底ほっとした様子だった。恵子とは、後日直接会う約束をした。



久しぶりに泊まりに来た恵子は、駅前のスーパーで惣菜を買ってきてくれた。

お酒好きの彼女のために冷やしておいたサワーとビールを、テーブルに並べる。

「かんぱ〜い!」
「かんぱ〜い!」

唐揚げを頬張った瞬間、容赦ない尋問が始まった。

「で? 一体何があったの。全部、吐き出しなさいよ」

吐き出せって……

慌てて、ウーロン茶で唐揚げをゴクリと流し込んだ。

主任たちに話した内容とその後を、そのまま伝える。

そして、恵子が教えてくれたのは、研二と麗華のその後だった。

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