[慶智の王子・西園寺京の物語]ラブストーリーは一夜の過ちから始まる〜アラフォー男と三十路女の拗らせ恋愛〜
第3章: 不要因子

二社への連絡を終え、ようやくプレゼンの日を迎えた。本来は2ヶ月前の予定だったが、悠士の件でこちらから延期をお願いしていた。

最初に登場したのは、ソーセージ&カンパニー。無添加に近い国産ソーセージを自社牧場で製造し、『体にやさしく、安心して食べられる』をコンセプトに掲げている。価格はやや高めだが、それに見合う品質だった。

営業担当の阿部という20代後半の男性が、整った資料を用いて説明を始める。サンプルも同時に提供され、実際に味を確かめられたのは好印象だった。

高橋の質問――ソーセージに使われているハーブの種類にもすぐに即答し、しかも生産者名まで把握していた。その点には感心させられる。

サンプルの味は、外国製にありがちな過剰なハーブ感がなく、肉の旨味がしっかりと前に出ていた。防腐剤を使わない分、賞味期限は短いが、冷凍保存が可能だという。

プレゼン後の評判も上々で、阿部自身の誠実な人柄にも信頼が置けた。



翌日、今度は平井フーズが来社した。事前の連絡では営業担当の矢部という男性一名と聞いていたが、実際にはアシスタントの女性が同行していた。同行者がいること自体は問題ない。

だが、その女性の服装は非常識だった。膝上のスカートに、胸元が大きく開いたトップス。

――何と言えばいいのか。
まるで夜の店にでも出るような格好だ。

これが平井フーズの営業方針だとしたら、当社とは根本的に相容れない。色仕掛けと受け取られても仕方がない。会社の顔として、あまりにモラルを欠いている。加えて、彼女の態度も軽薄だった。

秘書の本間や他のメンバーの表情が、一様に硬くなるのが分かる。とりわけ主任の高橋は、露骨に嫌悪を隠さなかった。

実は、俺の母もかつて伊乃国屋で営業職に就いていた。女性が努力だけで評価を勝ち取ることの難しさを、誰よりも知っている。

だからこそ、色気で仕事を取ろうとするこの手の人間には、どうしても厳しくなる。このアシスタントの存在は、業界で真っ当に働く女性たちの信用そのものを踏みにじっている。

俺の中では、すでに答えは出ていた。

あとは――静かに、駆除するだけだ。

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