[慶智の王子・西園寺京の物語]ラブストーリーは一夜の過ちから始まる〜アラフォー男と三十路女の拗らせ恋愛〜
翌週月曜日。
会議室のドアが開き、平井フーズの矢部研二と白川麗華が入ってきた。
だが、前回から何ひとつ学んでいない。白川はまたも深いVネックにミニスカートという、場をわきまえない服装だった。
ここが、どういう場所で、誰と向き合っているのか。その認識が、根本的に欠けている。
矢部は高橋に、あからさまな敵意を向けている。まるで、すでに契約を勝ち取ったような態度で。自分が不利な立場に立たされていることすら理解できていない、その無神経さに、呆れるしかなかった。
高橋が、静かに切り出す。
「失礼ですが、白川さん。本日はどのようなご用件で? もし営業以外の目的で来社されたのなら、お引き取りください」
一瞬で空気が凍りついた。固まる白川の代わりに、矢部が噛みつく。
「おやおや、そんな態度でいいんですか?
こちらの商品を扱えなくなりますよ。
……これだから、ちょっと仕事ができると勘違いしてる女は、可愛げがなくて困る」
その瞬間、会議室のドアが再び開いた。弁護士・伊集院涼介が姿を見せる。
「お久しぶりですね、矢部さん……白川さんも」
冷えきった声と、柔らかな笑顔。だが涼介の目は、感情を完全に切り落としたような黒い光を宿していた。
矢部の顔が、はっきりと引きつる。
「な、なんであんたがここに……?」
「私は伊乃国屋の顧問弁護士でもあります。本日のやり取りは、すでに録音・録画中です。発言には、十分ご注意ください」
完全に主導権を奪われた矢部は、椅子に座ることすらできず、しばらく立ち尽くしていた。
玄士叔父さんが、低く口を開く。
「では、矢部さん。前回のプレゼン資料について伺います。あれは、誰の指示で、誰が作成したものですか?」
「私の指示で、アシスタントの白川が作成しました」
「そうですか。白川さん。あなたも、矢部さんの指示で作った、という認識でよろしいですね?」
一瞬、矢部に視線を向けた白川は、目に見えて顔色を失った。震える声で答える。
「は、はい……その通りです」
すでに嘘は明白だった。だが二人は、まだ自分たちの足元が崩れ落ちていることに気づいていない。
玄士叔父さんが、無言でプレゼン資料を差し出す。
「これを、もう一度じっくり確認してください」
矢部がページをめくる。一瞬だけ視線を泳がせ、それでも強がるように顔を上げた。額には、うっすらと汗が滲んでいる。
「特に違和感はありませんが。……まだ何か?」
「そうですか。では、契約に至らなかった理由をお伝えしましょう」
俺が、静かに言葉を継いだ。
「誠意も、礼節も感じられなかった。社会人としての基礎が欠けている者と、当社は取引しません」
「ふ、ふざけるな! うちの商品は、どこよりも安いんだぞ! 損をするのは、そっちだ!」
矢部の怒鳴り声に、玄士叔父さんが鋭く言い放つ。その声が、この場の流れを完全に変える合図になることを、矢部はまだ知らない。
会議室のドアが開き、平井フーズの矢部研二と白川麗華が入ってきた。
だが、前回から何ひとつ学んでいない。白川はまたも深いVネックにミニスカートという、場をわきまえない服装だった。
ここが、どういう場所で、誰と向き合っているのか。その認識が、根本的に欠けている。
矢部は高橋に、あからさまな敵意を向けている。まるで、すでに契約を勝ち取ったような態度で。自分が不利な立場に立たされていることすら理解できていない、その無神経さに、呆れるしかなかった。
高橋が、静かに切り出す。
「失礼ですが、白川さん。本日はどのようなご用件で? もし営業以外の目的で来社されたのなら、お引き取りください」
一瞬で空気が凍りついた。固まる白川の代わりに、矢部が噛みつく。
「おやおや、そんな態度でいいんですか?
こちらの商品を扱えなくなりますよ。
……これだから、ちょっと仕事ができると勘違いしてる女は、可愛げがなくて困る」
その瞬間、会議室のドアが再び開いた。弁護士・伊集院涼介が姿を見せる。
「お久しぶりですね、矢部さん……白川さんも」
冷えきった声と、柔らかな笑顔。だが涼介の目は、感情を完全に切り落としたような黒い光を宿していた。
矢部の顔が、はっきりと引きつる。
「な、なんであんたがここに……?」
「私は伊乃国屋の顧問弁護士でもあります。本日のやり取りは、すでに録音・録画中です。発言には、十分ご注意ください」
完全に主導権を奪われた矢部は、椅子に座ることすらできず、しばらく立ち尽くしていた。
玄士叔父さんが、低く口を開く。
「では、矢部さん。前回のプレゼン資料について伺います。あれは、誰の指示で、誰が作成したものですか?」
「私の指示で、アシスタントの白川が作成しました」
「そうですか。白川さん。あなたも、矢部さんの指示で作った、という認識でよろしいですね?」
一瞬、矢部に視線を向けた白川は、目に見えて顔色を失った。震える声で答える。
「は、はい……その通りです」
すでに嘘は明白だった。だが二人は、まだ自分たちの足元が崩れ落ちていることに気づいていない。
玄士叔父さんが、無言でプレゼン資料を差し出す。
「これを、もう一度じっくり確認してください」
矢部がページをめくる。一瞬だけ視線を泳がせ、それでも強がるように顔を上げた。額には、うっすらと汗が滲んでいる。
「特に違和感はありませんが。……まだ何か?」
「そうですか。では、契約に至らなかった理由をお伝えしましょう」
俺が、静かに言葉を継いだ。
「誠意も、礼節も感じられなかった。社会人としての基礎が欠けている者と、当社は取引しません」
「ふ、ふざけるな! うちの商品は、どこよりも安いんだぞ! 損をするのは、そっちだ!」
矢部の怒鳴り声に、玄士叔父さんが鋭く言い放つ。その声が、この場の流れを完全に変える合図になることを、矢部はまだ知らない。