私のお姉ちゃん
天然
初姫は、天真爛漫な女性。
少々おバカで幼稚だが、穏やかで心優しく天使のようだ。

基本的に、分け隔てなく可愛がられている。
暁也も例外ではなく、特に朱雨はそんな初姫を狂おしく愛し、夏姫もある意味自分よりも大事に思っている。


初姫が食材の買い物に出掛けようと、家を出て門をくぐる。
ゆっくり街の方まで歩きだす。

すると「初姫ちゃん!」と、隣の家に住む女性に声をかけられた。

「え?あ、タナハシさん!こんにちは!」

「こんにちは!
お買い物?」

「はい!」

「じゃあ、スーパーまで送るわ!乗って?」
隣の自宅の駐車場の自家用車を指差す、タナハシ。

「いえ、大丈夫です!」

「あ、いや…ちょっと話したいことあるの!」

そう言われ、初姫はタナハシの自家用車の助手席に乗り込んだ。

「―――――ごめんね、無理に乗せるようなことして」

「いえ!」

「それでね。
噂を聞いたの。
初姫ちゃんが、最近結婚したって!」

「え?はい、しましたよ!
高校卒業してすぐに!」

「そ、そうなの…!?」

「はい!」

「でも、ほら!
初姫ちゃんはまだ、成人してないでしょ?」

「そうですが…」

「あ…ごめんね。
おばちゃんがこんな事言うの、お節介だってわかってるわ。
でも、なんだか心配で……
夏姫ちゃんは?ちゃんと、納得してるの?」

「はい」

「相手は?どんな方なの?」

「えーと……
○○って会社に勤めてます!」

「エリートだわ…
夏姫ちゃんの旦那さんもお医者さんだし……」

「タナハシさん?」

「あ、えーと……
ウチのテツロウね、今年△△に就職したの!」

「大手の会社ですよね!
私でも知ってるとこだ!」

「えぇ!
だから…ウチの息子どうかなって思ってたの(笑)」

「へ?
テツロウさんですか?」

「えぇ!
でも、結婚したって噂で聞いて……それで、聞いてみたってわけ。
残念だけど、諦めなきゃ(笑)」

クスクス笑うタナハシを見ながら、初姫は心の中で(たぶん、テツロウさんは私のことは嫌だと思うけどな…)と困ったように笑っていた。


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