私のお姉ちゃん
早く帰りたい。

早く朱雨くんと二人っきりになりたい。

もうここにいたくない。

私はそんな思いで、ただ…メニュー表を眺めていた。
何かしてないと、朱雨くんやお姉ちゃんに当たりそうだから。

そんな中、お姉ちゃんと暁也さんは二人でお話をしていて、朱雨くんは私と一緒にメニュー表を覗いていた。
時折朱雨くんが、私の髪の毛をくるくるして遊びながら。

「そう言えば、朱雨」

そんな朱雨くんに、暁也さんが話しかけた。

「ん?」

「ずっと気になってたんだけど、どうして朱雨は手首にネックレスを巻いてるの?」

「え?あ、あぁ…」

そう。
朱雨くんは、ネックレスを手首に巻いている。

このネックレスは、私が朱雨くんのお誕生日に初めてプレゼントした物だ。

朱雨くんは、首周りが常に広くあいていないとダメな人。
ネックレスはもちろん、ハイネックな服、マフラーやスヌードも苦手。

真冬でも、首周りは広くあいている。

それを知らなかった私が、ネックレスをプレゼントしてしまい、返金して違うプレゼントを贈るって言ったのを、朱雨くんは“せっかくの気持ちを無下に出来ない”と言ってくれて、手首に巻いたのだ。

そして「ほら!お洒落なブレスレットでしょ?」と微笑んでくれて、それからずっとつけてくれている。


「…………へぇ~!そうなんだね!」

優しく微笑む暁也さんに「ハツが選んでくれた物だから、返すなんて考えられないですから」と朱雨くんが言った。

「良い話だね!」
暁也さんが、お姉ちゃんに微笑んだ。

お姉ちゃんは「そうね」と微笑み返す。

でもその笑顔には“不満”しか感じられなかった。

食事が終わって、お姉ちゃんとおトイレに向かった。
鏡の前で、お姉ちゃんがメイク直しをしている。

私は鏡越しにお姉ちゃんを見ていた。

「ん?何?」
お姉ちゃんが優しく微笑み、首を傾げる。

「お姉ちゃん、綺麗だね」

「フフ…ありがと!
でも、ハツには負けるわ(笑)」

「私、綺麗じゃないもん」

顔も、心も………

「それは、ハツがわかってないだーけ!
ハツはモテモテだもん。昔から」

「そんなことないよ。
それよりも、お姉ちゃん気をつけなきゃ!
お姉ちゃんは“暁也さんのモノ”なんだから……!」

「え?」

お姉ちゃんが私に向き直り、目を見開く。

何か言いたそうだったけど、私は先におトイレを出た。


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