私のお姉ちゃん
その日初姫は、最初に暁也に声をかけた。

ちょうど暁也は夜勤明けで家にいて、朱雨と夏姫は仕事中だ。

「暁也さん!」

「ん?何?」

「暁也さんにお願いがあるんですが……」

「ん?何でも言って?
僕に出来ることは何でもするよ!」

初姫はエリナとナズナとの旅行の件を暁也に話し、一緒に朱雨と夏姫を説得してほしいと話した。

暁也は快く引き受けてくれた。


そして夕食中――――――

「「は?旅行!?」」

案の定、朱雨と夏姫はかなり嫌そうな表情をしていた。

「ハツ、それなら私も行く!」
「は?ナツじゃなくて、俺が一緒に行くよ!
それなら、許可してあげるよ!
大丈夫。
三人の邪魔はしない。
でも部屋は別々で、ハツは俺と一緒だけどね」

「………」
思った通りの返事に、初姫は切ない表情になり肩を落とす。

そこに暁也が口を挟んだ。

「夏姫と朱雨は“本当に仲が良いんだね…!”」と。

「「は?」」

「ほら、今も!
いつもいつも声を揃えてさ!
示し合わせてるみたいに、いつも揃うよね?
嫉妬しちゃうなー
“俺は”夏姫と声が揃うなんてないもんなぁー」

「暁也さん…」
「“俺”って……」

「二人は知ってる?
そうやって、二人が声を揃える度に“初姫が傷ついてること”」

「「え……」」
朱雨と夏姫が、初姫を見る。

初姫は、切なく瞳を揺らしていた。

「二人は、本当に気が合うんだろうね。
二人とも初姫のことになると見境がなくなって、自分に初姫の意識が常にないと不機嫌になって、初姫に自由を与えない」

「「………」」

「バイトだってそう。
初姫なりに成長しようと頑張ってるのに、それを制限して、初姫の気持ちを全く考えてない。
こんなことなら………
初姫を夏姫からも、朱雨からも離した方が良いんじゃないかとさえ思うよ!
その方が初姫は、幸せになれるんじゃないかって!」

「暁也さん、冗談はやめてよ…!!」
「俺からハツを離したら、いくら暁也さんだって殺りますよ?」

「だったら、初姫の気持ちを考えてあげなよ。
初姫は、二人の愛玩人形じゃない。
一人の女性だ。
自分の力で立ちたいし、旅行だって行きたいはず!」

暁也の説得で、朱雨と夏姫は“納得せざるおえなくなった”


「暁也さん、ありがとうございます!」

初姫は暁也のおかげで、エリナとナズナの三人で旅行に出掛けたのだった。


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