私のお姉ちゃん
過去
「――――そうゆうことは、部屋でにしな!」

「うん、ごめんね。お姉ちゃん」

夏姫の説教を受けながら、ペコペコ謝る初姫と冷めた目で見つめる朱雨。

(ほんっと…邪魔だな、ナツは。
…………………昔から……!)

朱雨は基本的に、クールな男性だ。

そして学生の頃は、いつも女に囲まれていた――――――


幼稚園児の頃から既にモテて、高校生になった時には恋人はおろか経験人数も二桁に及んでいた朱雨。

両親は共働きで、ほとんど家にいない。
両親ともに会社の役員で金にも困らないし、色んな意味で自由だったのもあり、一時期女性の家に泊まり歩いていたこともある。

その女性達から、暁也が纏めていたチームに誘われた朱雨。
暁也から喧嘩を教わり、そこでも女を紹介してもらい、好き勝手に遊び回っていた。

そして高校生になった頃出逢ったのが、夏姫だ。

同じ高校で、クラスも同じ。
更に当時、チームの仲間の恋人だったのもあり、よく話すようになって一緒にいる時間も多かった二人。

恋人にフラレて、傷心しているのを慰めたのも朱雨だった。

その流れのように身体を重ねることも多くなり、そのまま付き合うようになった。

正直、楽しかった。
夏姫も賢い女性。
波長も合うし、一緒にいて楽。
そして身体の相性も良い。

それは夏姫も同じで“好きだから”というより“楽だから”二人はそのまま大学も一緒の大学を受け、関係を続けていた。

大学を卒業したのと同時に、互いに就職しそのまま別れた二人。
それでも、セフレとして時々会って身体を重ねていた。

そんな関係を二年程続けていた頃。

「――――朱雨」

「んー?」
この日もホテルで会っていた二人。
ヘッドボードに寄りかかり煙草を吸っていた朱雨に、隣で横になっている夏姫が声をかける。

「もう、こんな風に会うのやめよ?」

「なんで?」

「仕事が忙しくなったのもだけど、妹の傍にいてあげたいの」

「あぁ…
そうだよね。
うん、わかった」

先月夏姫と初姫の両親が事故で亡くなり、二人だけになった夏姫と初姫。

学生の頃は、夏姫も同様に家にいることが少なく、朱雨や友人達と外を出歩いたり、朱雨のマンションに泊まったりしていた。
なので、これからは初姫の傍にいてあげたいと思ったのだ。

「妹さんの写真とかないの?
見てみたい!」

夏姫とは長い付き合いなのに、全く初姫と会ったことがなかった朱雨。
興味本位で、夏姫に言った。

夏姫がスマホを操作し、写真を見せてきた。

初姫の高校の入学式での、ツーショットだ。

「……//////」

一目惚れだった――――――

朱雨は、一瞬で初姫に心を奪われたのだ。


< 7 / 50 >

この作品をシェア

pagetop