暁に星の花を束ねて
「……必要経費、か」

低く乾いた声は、静寂に包まれた碧鱗の間に不気味なほどよく響いた。

「で、その帳簿の最上段に少名彦凛翔。あなたの名前は、きちんと書き込まれているんでしょうな」

佐竹は抑えた声で追い打ちをかける。

「まさか己は勘定書きの外に身を置き、高みの見物を決め込むつもりではあるまいな。傍観者を気取って死者を数え、その数に酔うとはいい趣味だ……おまえの父親譲りのな」

暁烏真澄が投影した映像を前に、凛翔は張り付けたような笑みの裏で、内心では凍りつく。

父、隼人の首刈りは知っていた。

だが、それは経営の話だ。

役立たずを切り捨て、より強いものを生かす。
あくまで机上の選別に過ぎなかったはずだ。

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