暁に星の花を束ねて
一拍の沈黙。

「結局おまえは父親の檻を壊すどころか、その内側で飾り立てた首輪を王冠と呼んで満足しているだけだ」

無駄な感情も昂ぶりもない。
ただ、冷徹なまでに淡々と。

首筋にひやりと冷たいものが這い上がる。

まるで見えない鎖が、その喉元に絡みついてくるようだった。
負けじと凛翔は佐竹を睨みつける。

「……違う! これは、おれの意志だ。父の作った古い体制を壊し、本当の秩序を築くための戦いだ!」

その声はどこか空虚だった。

「吠えるのは結構だが。まずは自分が噛みつける牙を持っているかどうか、確かめてから口を開け」

背後に立つ暁烏真澄の微笑が、その意志すらも掌の上にあることを雄弁に語っている。

朝倉は椅子からゆっくりと立ち上がり、冷ややかな視線を凛翔に向けた。

「ええ……立派なお坊ちゃんのご決意。でも、自分の背後にどれだけの業火が灯っているか、そろそろ気づいたほうがいいかと思いますよ」

暁烏の琥珀色の瞳が僅かに細められた。

その場は硬直したまま交渉終了となる。

だが会議室を出る際、真澄は誰にも聞こえぬよう呟いた。

「氷はいつか溶ける。それまでに……こちらの焔は、どこまで燃え広がるでしょうね」

その声は終焉を予告する鐘の音のように、微かに、そして確かに響いていた。

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