暁に星の花を束ねて
決裂
交渉は決裂した。
その日の午後、スクナヒコナテクノロジーズの本社ビルは、不自然な静寂に包まれていた。
戦略部門の一角。
複数の端末に囲まれた情報分析課では、会議の録画映像が非公式に再生されていた。
「……PROJECT REVIVE……?」
片岡一真が眉を動かす。
「あれって、ただのエコ支援プロジェクトじゃなかったんですか」
若手社員のひとりが顔を強張らせる。
画面には《カオス・カリクス・インフィニタム》の映像。
赤黒い花弁、金属光沢を帯びた種核。
そこから漂う霧は、まるで命を持つように脈動し、発光していた。
「ナノ毒の再設計だ。しかも、あれは……制御できる類の代物じゃない」
片岡が小さく呟いたその時──
戦略部門の通信回線に、佐竹蓮の声が入った。
『──プロジェクトは中止だ。対象すべてを死滅域として再指定しろ』
その一言で、空気が変わった。
冗談も皮肉も封じられた部屋に、鋼の緊張が走る。
片岡は数秒だけ沈黙し、端末のデータウィンドウを切り替えながら、静かに言った。
「……了解しました。死滅域再指定、影班に通達を。BEHとの連携は一時凍結、アクセス権は私の裁量で制限します」
そして、背後の若手たちに目を向けた。
「ここから先は、覚悟が要るぞ。これは環境保全の話じゃない。生存戦略だ」
誰も返事をしなかった。
その代わりに、複数の端末に新たな指令が走り、映像は静かにノイズを帯びて消えた。
その日の午後、スクナヒコナテクノロジーズの本社ビルは、不自然な静寂に包まれていた。
戦略部門の一角。
複数の端末に囲まれた情報分析課では、会議の録画映像が非公式に再生されていた。
「……PROJECT REVIVE……?」
片岡一真が眉を動かす。
「あれって、ただのエコ支援プロジェクトじゃなかったんですか」
若手社員のひとりが顔を強張らせる。
画面には《カオス・カリクス・インフィニタム》の映像。
赤黒い花弁、金属光沢を帯びた種核。
そこから漂う霧は、まるで命を持つように脈動し、発光していた。
「ナノ毒の再設計だ。しかも、あれは……制御できる類の代物じゃない」
片岡が小さく呟いたその時──
戦略部門の通信回線に、佐竹蓮の声が入った。
『──プロジェクトは中止だ。対象すべてを死滅域として再指定しろ』
その一言で、空気が変わった。
冗談も皮肉も封じられた部屋に、鋼の緊張が走る。
片岡は数秒だけ沈黙し、端末のデータウィンドウを切り替えながら、静かに言った。
「……了解しました。死滅域再指定、影班に通達を。BEHとの連携は一時凍結、アクセス権は私の裁量で制限します」
そして、背後の若手たちに目を向けた。
「ここから先は、覚悟が要るぞ。これは環境保全の話じゃない。生存戦略だ」
誰も返事をしなかった。
その代わりに、複数の端末に新たな指令が走り、映像は静かにノイズを帯びて消えた。