暁に星の花を束ねて
一方で。


社内にも静かに火種が撒かれ始め、株主間の私的な会話が、いくつもの小さな会議室でささやかれていた。

「現CEOは息子に判断を任せたが……あれでは……」

「佐竹を支持する派閥を形成するべきだ。あの男なら、まだ未来が描ける」

「彼はすでに理事会で最高権限保持者だ。経営判断において、CEOと同等の発言権を持つ。安易に動けば、こちらが切り捨てられるぞ」

「それでも、いずれは……あの椅子を狙うだろう」

それはまだ明確な動きではなかったが、確実に波紋は広がり始めていた。

王座は未だ揺らがず、王はそれを静かに見下ろしている。
だが足元では確実に、誰かが火を灯そうとしていた。

 王座には座った者にしか見えない景色がある。

そこから落ちていく者たちの姿も何度となく見てきた。

だからこそ隼人は知っていた。

 ──佐竹蓮という男が、いまその景色を見上げていることを。
 ──そして自分がその景色を譲る気など、まだ微塵もないことを。


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