暁に星の花を束ねて

夜の研究室で



調和部門研究室─夜

ホログラムの光だけが暗い室内を照らしていた。

試料をスキャンしていた葵の手が、かすかに止まる。

「ねえ、葵ちゃん」

背後から聞こえた結衣の声は、いつもより少し低かった。
静かな研究室に、電子音が小さくこだまする。

「佐竹部長が受け持った商談……ダメだったらしいよ」

「え?」

葵は振り返り、目を瞬かせた。

「本当は手もケガしてたんだって。手袋の下に包帯巻いてるの、見た人がいるんだよ」

「ケガ……?」

葵は首を傾げる。
ホログラムの青白い光が、彼女の頬を照らした。

「この前会ったときは、そんな様子もなかったけど……」

「銃の試し撃ちでケガしたんだって。開発部の人が云ってたよ。表情も変えないまま出てったって」

「……え?」

葵の胸にざわめきが広がる。

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