暁に星の花を束ねて
(なんだろう、これ)

葵は息をのんだ。
タップすれば何かが現れる……そんな予感が胸をよぎる。

だがその時。

「仕事の邪魔をするな」

低く冷ややかな声。

肩越しに振り返ることなく、佐竹は鬱陶しそうに云い放った。

「部外者は閲覧禁止だ」

その声音は冷たくも鋭くもなかったが、容赦もなかった。

「……ちょっとくらい、いいじゃないですか」

葵は頬をふくらませた。
もう、佐竹の調子にもいちいち怯えなくなっていた。

背後からのぞき込んでいた体勢のまま小さく呟く。

「どうせ、また誰にも云わずに勝手に分析してるんでしょ。……わたしの花なのに」

その言葉に、佐竹の指がぴたりと止まる。

「許可は取ったつもりだが」
「取ってません」

言い返した瞬間、自分でも少し言い過ぎたかと心の中で焦る。
けれど佐竹は、ほんのわずかだけ息を吐いたように見えた。

「では今、ここで取れば問題ないな」

それだけを云うと、再び画面に目を戻す。


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