暁に星の花を束ねて
「どうしていつも、そう……!」
強引なのか。
思わず声を荒げかけた葵だったが、そのまま言葉を呑み込んだ。
(……云ったところで、どうせ届かない)
この人に限らず上にいる人間はみんなそうだった。
理屈も想いも、まともに受け取ってもらえたことなどない。
「もう、いいです」
拗ねたように背を向けようとしたとき、端末の隅に記された文字が目に入る。
『星野A-α/花弁拡張第4段階』
(わたしの名前?)
驚いて目を凝らした葵だったが、画面を見返すより先に、佐竹の指先が端末を静かに閉じた。
パタン、という微かな音が温室の空気を切るように響く。
身体を捻った佐竹が、じっとこちらを見つめている。
目を逸らすことも薄く笑うこともせず、ただ真正面から。
「云いたいことがあるなら、いってみろ」
椅子に座る佐竹と、立っている自分の目線はほぼ同じだった。
それだけで空気がわずかに震えた気がした。
(……この人に、こんなふうにまっすぐ見られるの、苦手……)
葵は思わず視線を逸らしかけたが、すぐに自分の足元を見つめ、唇を噛んだ。
(でも、云わなきゃ。云わなきゃ、きっとまた、何も伝わらないままになる)
ぎゅっと両拳を握りしめ、顔を上げた。
心臓がどくどくと暴れ、息がうまく吸えない。
けれど、それでも踏み出すように一歩進む。
「じゃあ……云わせていただきます!」
思わず声が上ずる。