暁に星の花を束ねて
議題一:後継問題
「第一議題。後継候補・少名彦凛翔氏の暫定承認について」
進行係の声が静かに響いた瞬間、室内の空気が硬直する。
理事たちの視線が、ほぼ一斉に佐竹へ向かった。
まるで次に発せられる言葉を全員が待っているかのようだった。
だが佐竹は何も云わなかった。
ただ資料から目を外さず、手元の端末に指を置いたまま、沈黙。
その沈黙こそが、誰よりも雄弁だった。
隼人が緩やかに口を開く。
「……佐竹部長。何か異議が?」
一拍置いて、低い声が空気を裂く。
「いいえ。異議ではありません。ただ一言だけ申し上げたい」
その声音は冷たく静かでありながら、理事会という名の密閉空間の底を撫でるように響いた。
抑揚は穏やかだが、聞く者すべての神経を捕らえる声。
「現場では、ナノ毒抑制酵素のデータ流出が続いています。
その監査が完了する前に後継を決めるのは、手順として危うい。
誰が座っても、椅子そのものが腐っていれば意味はない」
会議室の空気が、一瞬で変わった。
ペンが落ちる音がひとつ。
誰かの咳払いがその場を裂き、すぐに消える。
何かが軋む音。
それが、組織という巨大な装置の軋みそのものに思えた。
「第一議題。後継候補・少名彦凛翔氏の暫定承認について」
進行係の声が静かに響いた瞬間、室内の空気が硬直する。
理事たちの視線が、ほぼ一斉に佐竹へ向かった。
まるで次に発せられる言葉を全員が待っているかのようだった。
だが佐竹は何も云わなかった。
ただ資料から目を外さず、手元の端末に指を置いたまま、沈黙。
その沈黙こそが、誰よりも雄弁だった。
隼人が緩やかに口を開く。
「……佐竹部長。何か異議が?」
一拍置いて、低い声が空気を裂く。
「いいえ。異議ではありません。ただ一言だけ申し上げたい」
その声音は冷たく静かでありながら、理事会という名の密閉空間の底を撫でるように響いた。
抑揚は穏やかだが、聞く者すべての神経を捕らえる声。
「現場では、ナノ毒抑制酵素のデータ流出が続いています。
その監査が完了する前に後継を決めるのは、手順として危うい。
誰が座っても、椅子そのものが腐っていれば意味はない」
会議室の空気が、一瞬で変わった。
ペンが落ちる音がひとつ。
誰かの咳払いがその場を裂き、すぐに消える。
何かが軋む音。
それが、組織という巨大な装置の軋みそのものに思えた。