暁に星の花を束ねて
誰もいない病室で
──誘拐から戻った葵。
病室の窓の外では夜明け前の淡い光が滲んでいた。
冷たい静寂の中、誰もがまだ言葉を探している。
ベッドの上で葵は包帯の巻かれた手を握りしめ、嗚咽を飲み込んだ。
「ごめんなさい……っ。わたしが勝手なことばかりして……」
「事実として、玉華は視力を失った。だがそれは、おまえを責めての言葉じゃない」
佐竹の声は冷ややかに聞こえたが、その奥には痛みと後悔が混じっていた。
沈黙。
だが、その静寂を破ったのは玉華だった。
「佐竹さま。わたくしの視力よりも、話さねばならぬことがあるのではありませんか?」
その声は澄んでいた。
「なぜ葵さまがこのような行動をされたのか。佐竹さまの口から、真実をお話しくださいませ」
そう云い残し玉華は静かに姿を消した。
残されたのは、葵と佐竹だけ。
病室の蛍光灯が唸るように微かに震え、
白い壁に落ちる佐竹の影だけが長く伸びていた。