暁に星の花を束ねて
意味は理解できるのに、心が追いつかない。

喉の奥が熱くなり、視界が滲む。
十年間抱え続けた想いが一瞬でほどけ、
呼吸すら忘れそうになった。

佐竹はその変化を静かに見つめていた。
逃げず逸らさず、真正面から。

黒い瞳が、ようやく女性としての葵を捉えたように優しく揺れていた。


「気づけば、おまえと過ごす時間が特別になっていた。
感情もなくなっていたと思っていたおれ自身が、一番驚いたものだ」


葵の瞳が潤み、頬が赤く染まる。
佐竹はわずかに微笑む。

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