暁に星の花を束ねて
空白の花弁
ルミナリウム・ガーデンの扉が勢いよく開く。
奥にある白い光に包まれた温室は、ステラ・フローラの微かな香りに満ちていた。
その中央。
小さな木製テーブルの上に、ぽつんと置かれた古い端末。
葵は駆け寄り、震える両手で掴んだ。
「これです!! 佐竹さんが、ここでいつも使っていた端末!!」
追いかけて入ってきた片岡が、息を整えながら言う。
「星野さん。操作を」
葵はうなずき、急いで起動させる。
古い機体は低い駆動音を響かせ、画面が青く明滅した。
指先が思うようにいうことをきかない。
力を込めようとしても、うまく入らない。
息を吸うたびに胸の奥が軋んだ。
背後の気配が、やけに遠い。
端末を開く。
冷たい光が指の輪郭を照らした。
ひとつ、深呼吸。
そして、ゆっくりと文字を打ち込む。
「……AOI」
かすれそうな声でつぶやく。
一拍。
二拍。
ピッ──。
短い電子音とともに、世界が息を止めた。
黒かった画面に、白い光の筋が走る。
ロックが、ほどけていく。
開く。
そこにあった言葉は、ただひとつ。
『Be happy AOI』
それだけだった。
「……え……うそ……?」
膝から力が抜け、ペタンと崩れ落ちた。
「どうして……どうして……!!」
涙が床に散る。
喉の奥が締めつけられ、声が出ない。
「なんで……なんで、幸せであれなんて……! そんなの……そんなの、まるで──」
遺書みたい──と言葉にできなかった。
奥にある白い光に包まれた温室は、ステラ・フローラの微かな香りに満ちていた。
その中央。
小さな木製テーブルの上に、ぽつんと置かれた古い端末。
葵は駆け寄り、震える両手で掴んだ。
「これです!! 佐竹さんが、ここでいつも使っていた端末!!」
追いかけて入ってきた片岡が、息を整えながら言う。
「星野さん。操作を」
葵はうなずき、急いで起動させる。
古い機体は低い駆動音を響かせ、画面が青く明滅した。
指先が思うようにいうことをきかない。
力を込めようとしても、うまく入らない。
息を吸うたびに胸の奥が軋んだ。
背後の気配が、やけに遠い。
端末を開く。
冷たい光が指の輪郭を照らした。
ひとつ、深呼吸。
そして、ゆっくりと文字を打ち込む。
「……AOI」
かすれそうな声でつぶやく。
一拍。
二拍。
ピッ──。
短い電子音とともに、世界が息を止めた。
黒かった画面に、白い光の筋が走る。
ロックが、ほどけていく。
開く。
そこにあった言葉は、ただひとつ。
『Be happy AOI』
それだけだった。
「……え……うそ……?」
膝から力が抜け、ペタンと崩れ落ちた。
「どうして……どうして……!!」
涙が床に散る。
喉の奥が締めつけられ、声が出ない。
「なんで……なんで、幸せであれなんて……! そんなの……そんなの、まるで──」
遺書みたい──と言葉にできなかった。