暁に星の花を束ねて
「星野さん……すみません、少し見ます」
片岡は唇を結び、端末をそっと受け取る。
それは、かなり旧式の端末だった。
本来であればすでに更新対象から外れ、廃棄されてもおかしくない世代の機種。
だが予算の都合もあり、正式な廃棄処理がなされないまま温室の一角に残されていた。
主な用途は温室管理の経過ログの閲覧。
最新の操作端末とは別系統で、ただ淡々と記録を映し出すだけの、いわば見るためだけの機械だったはずだ。
(……)
彼は落ち着いた手つきでスクロールし、改めて件名に目を戻す。
『花弁第4段階 A-α4』
「……A-α4?」
文字列に違和感を覚える。
(第4段階? そんな研究結果はないはず……)
ステラ・フローラの花弁拡張は本来、第3段階までのはずだ。
それ以降は葵自身も未踏領域で、論文すら存在しない。
つまり。
第4段階がファイル名に付くこと自体、あり得ないのだ。
片岡は息を殺し、慎重にクリックした。
スライドが開く。
そこには葵が以前、覗き見たものと同じ。
びっしりと並ぶ膨大な数式。
英語の略語。
化学式。
回路図のような構造データ。
モノクロで描かれた花弁の断面図。
そして、所々に唐突に挟まる空白。
片岡はページをめくるたび、眉をひそめた。
「……なんだ……これは……?」
片岡は唇を結び、端末をそっと受け取る。
それは、かなり旧式の端末だった。
本来であればすでに更新対象から外れ、廃棄されてもおかしくない世代の機種。
だが予算の都合もあり、正式な廃棄処理がなされないまま温室の一角に残されていた。
主な用途は温室管理の経過ログの閲覧。
最新の操作端末とは別系統で、ただ淡々と記録を映し出すだけの、いわば見るためだけの機械だったはずだ。
(……)
彼は落ち着いた手つきでスクロールし、改めて件名に目を戻す。
『花弁第4段階 A-α4』
「……A-α4?」
文字列に違和感を覚える。
(第4段階? そんな研究結果はないはず……)
ステラ・フローラの花弁拡張は本来、第3段階までのはずだ。
それ以降は葵自身も未踏領域で、論文すら存在しない。
つまり。
第4段階がファイル名に付くこと自体、あり得ないのだ。
片岡は息を殺し、慎重にクリックした。
スライドが開く。
そこには葵が以前、覗き見たものと同じ。
びっしりと並ぶ膨大な数式。
英語の略語。
化学式。
回路図のような構造データ。
モノクロで描かれた花弁の断面図。
そして、所々に唐突に挟まる空白。
片岡はページをめくるたび、眉をひそめた。
「……なんだ……これは……?」