暁に星の花を束ねて
SHT本社 中枢階層『インタリンク分析室』
戦略棟と調和棟の中間に位置するその部屋は、
部門横断でデータを共有するために設けられた特別区画だ。
普段は専門官が数名いるはずの空間に、今日に限って人影はなかった。
分析卓の前で、異常に綺麗すぎるログを見つめたまま、楓が眉を寄せて小さく吐き捨てる。
「でもどうして、こんなことをしたのかしら?
佐竹部長が、こんなまわりくどい手を使うなんて」
馬渡は端末から目を離さず、静かに答えた。
「強い確信が欲しかったんでしょうね」
「確信?」
「ステラ・フローラの研究は極秘中の極秘。それが突然漏れ、少名彦CEOは紅蓮院宗牙に独占を責められました。
本来なら、あの密談も佐竹部長が同席して当然です」
楓が肩をすくめる。
「ええ。外せなんて命令が出たところで、側近をあそこから外す理由なんてどこにもないわ」
馬渡は小さく頷き、淡々と続けた。
「だから動いたんですよ。不自然な排除の裏を取るために。わざと死角に入って、真相を確かめに行ったんです」
その言葉に、楓のまつげがわずかに震えた。
「……じゃあ、まさか。佐竹部長はCEOが関わっている可能性を?」
「それを確かめに行ったのでしょう」
馬渡は穏やかな声のまま、しかし瞳だけは鋭く細めた。
静かな室内に、空気の温度が一段低く落ちた。
戦略棟と調和棟の中間に位置するその部屋は、
部門横断でデータを共有するために設けられた特別区画だ。
普段は専門官が数名いるはずの空間に、今日に限って人影はなかった。
分析卓の前で、異常に綺麗すぎるログを見つめたまま、楓が眉を寄せて小さく吐き捨てる。
「でもどうして、こんなことをしたのかしら?
佐竹部長が、こんなまわりくどい手を使うなんて」
馬渡は端末から目を離さず、静かに答えた。
「強い確信が欲しかったんでしょうね」
「確信?」
「ステラ・フローラの研究は極秘中の極秘。それが突然漏れ、少名彦CEOは紅蓮院宗牙に独占を責められました。
本来なら、あの密談も佐竹部長が同席して当然です」
楓が肩をすくめる。
「ええ。外せなんて命令が出たところで、側近をあそこから外す理由なんてどこにもないわ」
馬渡は小さく頷き、淡々と続けた。
「だから動いたんですよ。不自然な排除の裏を取るために。わざと死角に入って、真相を確かめに行ったんです」
その言葉に、楓のまつげがわずかに震えた。
「……じゃあ、まさか。佐竹部長はCEOが関わっている可能性を?」
「それを確かめに行ったのでしょう」
馬渡は穏やかな声のまま、しかし瞳だけは鋭く細めた。
静かな室内に、空気の温度が一段低く落ちた。