暁に星の花を束ねて
(助かった……の?)

葵が呆然としていると。

「……!」

温室に戻ってきた善一が、手にしていた診療カルテを床に落とした。
血だらけの娘の手、薬品の入った小瓶。
何をしたのか一瞬で理解したからだ。


「馬鹿者ッ!!」


怒声が空気を裂いた。
駆け寄ってきた善一が、そのまま勢いで娘の頬を打つ。


「見様見真似で医療行為を!? 葵、おまえ……! これは冒涜だ!! 命を弄ぶな!!」


葵はうつむいたまま震えていた。
だが泣いてはいなかった。
自分のしたことを最後まで受け止める覚悟だけが、そこにあった。

「……わたし……」

その言葉に続くものはなかった。

善一は黙って再度モニターを確認した。
そこには、たしかに生きているという波形が刻まれてる。

ステラ・フローラの抽出液。
隠されていた植物の力が、今、ひとつの命をつないでいた。

驚きと困惑を湛えた善一の顔が、ゆっくりと娘へと向く。


「……あとはおれがやる。薬品を取ってこい。手袋を忘れるなよ」

「うん」


葵が立ち上がる。
背後でステラ・フローラの光導管が、ほんのかすかに脈動していた。

まるでその選択が肯定されたかのように。

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