暁に星の花を束ねて
この世界に繋ぎ止めるもの
星の花が選んだ命
「佐竹さん!! 佐竹さんっ!!」
葵が、必死に叫ぶ。
応急灯だけが、脈打つように明滅していた。
警報はすでに止まっている。だが代わりに、機器が吐き出す不規則な警告音が、空間を叩いていた。
「心拍、低下!」
「呼吸、ほぼ停止……!」
誰かの声が響く。
だがその音は、葵の耳には遠かった。
床に横たわる、ただひとりの男。
灰色の指先。
動かない胸。
頬から、すべての血の気が引いている。
「佐竹さん!! こんなのだめっ!!」
膝から崩れそうになる感覚を、必死にこらえる。
研究者として、冷静でなければならない。
だが、恋した者としては、その理屈を壊したかった。
「星野研究員、離れてください!」
「中和剤が来るまで――」
「間に合いません!!」
思わず声が荒れた。
誰もが息を呑み、彼女を見る。
「普通の中和剤じゃ、佐竹さんのナノ毒には、もう効かないんです。でもまだ、方法がひとつだけあります」
その場の空気が凍りつく。
「……それは?」
葵は、ゆっくりと頷いた。
震えているのは、指だけじゃない。
唇も、心臓も、肺も、すべてが小刻みに揺れている。
それでも、顔を上げた。
「研究中のステラ・フローラの抽出液です。
不安定でなかなか形にならなくて……。ステラは器具じゃだめなんです。空気に触れさせたら、壊れてしまう。人の体温と呼吸の酵素で安定する」
沈黙。
誰も、止めなかった。
もう止められる段階ではないと、全員が悟っていた。
葵は涙をこらえ、小さなアンプルを開けた。