暁に星の花を束ねて
その瞬間――
淡く、そして異様なまでに澄んだ香りが、広がる。
懐かしい温室の匂い。
涙が、滲みそうになる。
「佐竹さん。
わたしのステラと、佐竹さんの細胞に答えた、佐竹さんの一部です」
佐竹の顔へ、ゆっくりと自分の顔を近づける。
吐息が、混ざる距離。
迷いはもうなかった。
彼の唇は冷たい。
しかしまだ生きている者の、わずかな温度が残っていた。
葵は目を閉じる。
唇を重ね、静かに、命を分け渡す。
それは恋ではなく
誓いでもなく
ただ、生かすためだけの行為。
体温が混ざり
息が重なり
心臓の音が、ふたつ重なった。
(帰ってきて……佐竹さん……お兄さん……)
一秒が、永遠のようだった。
そのとき。
「……っ……」
ごく、かすかな音。
誰よりも早く、葵が気づく。
佐竹の喉が、わずかに動いたのだ。
――吸った。
ほんの微かに。
だがそれは、確かな呼吸だった。
「……動いた……!」
誰かの声が震える。
「心拍が戻っています!」
「血中に反応あり!」
だが葵の耳には、何も入らなかった。
ただ唇に残る、温度だけ。
ゆっくりと顔を離し、額を彼の額にあてながら、小さく囁く。
「……よかった……帰ってきてくれた……」
その瞬間、張りつめていた糸が切れたように、涙がこぼれ落ちた。
止めようとしていた感情が、一気にあふれ出す。
それは祈りであり
恋であり
研究者としての証明であり
なにより――
ひとりの女性が、ひとりの男を、
この世界に繋ぎとめた証だった。
淡く、そして異様なまでに澄んだ香りが、広がる。
懐かしい温室の匂い。
涙が、滲みそうになる。
「佐竹さん。
わたしのステラと、佐竹さんの細胞に答えた、佐竹さんの一部です」
佐竹の顔へ、ゆっくりと自分の顔を近づける。
吐息が、混ざる距離。
迷いはもうなかった。
彼の唇は冷たい。
しかしまだ生きている者の、わずかな温度が残っていた。
葵は目を閉じる。
唇を重ね、静かに、命を分け渡す。
それは恋ではなく
誓いでもなく
ただ、生かすためだけの行為。
体温が混ざり
息が重なり
心臓の音が、ふたつ重なった。
(帰ってきて……佐竹さん……お兄さん……)
一秒が、永遠のようだった。
そのとき。
「……っ……」
ごく、かすかな音。
誰よりも早く、葵が気づく。
佐竹の喉が、わずかに動いたのだ。
――吸った。
ほんの微かに。
だがそれは、確かな呼吸だった。
「……動いた……!」
誰かの声が震える。
「心拍が戻っています!」
「血中に反応あり!」
だが葵の耳には、何も入らなかった。
ただ唇に残る、温度だけ。
ゆっくりと顔を離し、額を彼の額にあてながら、小さく囁く。
「……よかった……帰ってきてくれた……」
その瞬間、張りつめていた糸が切れたように、涙がこぼれ落ちた。
止めようとしていた感情が、一気にあふれ出す。
それは祈りであり
恋であり
研究者としての証明であり
なにより――
ひとりの女性が、ひとりの男を、
この世界に繋ぎとめた証だった。