暁に星の花を束ねて
低く、歪んだ振動音が部屋の奥から響いた。

「……?」

凛翔の眉がわずかに動く。

さらに一度──
そして、三度目の振動。


臨界値、突破 警告音。


だがそれは、室内のシステムではなかった。

壁が、爆ぜた。

閃光。
衝撃。
音という音が、世界から奪われる。

「な、に……!?」

凛翔の声が歪む。

闇を裂いて、黒い影がなだれ込んだ。

「影班、突入!!」
「目標確保!!」

銃声。
刃が閃き、拘束具が弾け飛ぶ。

混乱の中で、聞こえた声。

「──佐竹さんっ!」

鼓膜ではなく、心に届いたその声。

(……葵……)

視界が、ゆっくりと滲んでいく。

その向こうで凛翔の叫びが聞こえた。
拘束された彼は、倒れた佐竹を見て錯乱したように笑い出す。


「はは……はははは……!
 勝っただろう!? おれは、勝ったんだ!!」


だがその足元に、ゆっくりと影が立つ。
低く、冷たい声。


「勝ったのは、おまえじゃない。佐竹部長だ」


片岡一真の声だった。

佐竹は最後にそれを聞いた。

ゆっくりと、瞼を上げる。

煙に霞んだ視界の向こうで、片岡のシルエットを捉える。
血に濡れた指先が、わずかに動いた。

ただ、ほんの一瞬だけ——

口元が、わずかに緩んだ。

それは勝利でも、皮肉でもなく。

「よくやった」
という、ただそれだけの合図だった。

次の瞬間、睫毛が静かに伏せられる。


重力に引かれるように体から力が抜ける。

闇が、ようやく追いついてくる。


それでもその表情は 消えない。

恐れのないまま


戦略家としても
男としても
完璧な沈黙のまま


佐竹蓮は、意識を手放した。

影が、彼を包み込む。












──灰の檻、崩壊す。





< 208 / 249 >

この作品をシェア

pagetop