暁に星の花を束ねて
嵐の外
佐竹救出後──
佐竹蓮が偽の逮捕を受け行方不明となり、そして拉致監禁されていたという事実は、やがて隠しきれなくなった。
さらにそれが、スクナヒコナ・テクノロジーズCEO 少名彦隼人の実の息子、凛翔によって企てられた事件であったと判明すると、事態は一気に社会的事件へと発展した。
「大企業の闇」
「内部権力闘争」
「後継者問題の暴走」
そんな見出しが、各報道機関のホログラムニュースに踊った。
スクリーンに映し出されたのは、 かつて緊急搬送された佐竹の姿。
そして拘束装置が残がいとなった極東第七防衛圏の映像だった。
コメント欄には怒りと恐怖と同情が溢れかえった。
『恐ろしいな……』
『SHTは何を隠している』
内部告発のような情報も、次々に浮上した。
戦略部門への不当な干渉、 研究データの横流し、凛翔による過去の倫理違反疑惑。
過去に抑え込まれていた声が、 一斉に水面へと浮かび上がってきた。
社内は騒然となった。
理事会は緊急招集され、 株主からは説明責任を問う声が殺到した。
しかし佐竹蓮の功績が新たに見直される。
かつて彼の判断によって救われた部署。
整理され、建て直されたプロジェクト。
沈みかけた部門を、黙って支えてきた実績。
それらを知る者たちは、声を揃えた。
「彼は、消されるべき人間ではない」
「むしろ、この会社に必要なのは彼だ」
その声は、静かに、しかし確実に広がっていった。
廊下の片隅。
自販機の前で、二人の社員が声を潜めていた。
「……内部用緊急メール見た? すごかったよね」
「うん。まさか戦略部門の譲渡権限を、全部門に通達するなんて」
「逃げられないよな」
誰かが周囲を確かめるように視線を走らせ、低く続ける。
「佐竹部長……最初から、わかってたのかも」
「うん。上からの無茶、全部引き受けて。いつか切り捨てられるかもって……。今ならわかる」
「守らされてたの、部下じゃなくて……」
言葉が、そこで途切れた。
別の社員が、小さく息を吐く。
「あの人が戻ってくるなら。SHT、まだやり直せる気がする」
誰も大きな声では云わなかった。
だがその沈黙は、確かな意思を帯びていた。