暁に星の花を束ねて

特別投与

「……では……」

息を吸う。
彼には珍しい、言葉を探す間だった。
 

「あの端末に、おまえの名を使う理由が他に、どこにある」
「っ……!」
「おれには当然でも、おまえには違ったんだな」


ゆっくりと葵の頬に触れ、涙を指で拭う。


「悪かった。おれが不器用すぎた」
「……ばかぁ……」
「そうだ。おれはどうしようもなく、ばかだ」


そして、絞るように静かに続けた。


「……だが、そのばかは……おまえが好きで仕方がないんだ」


葵の呼吸が止まる。


「だから、もう泣かないでくれ。
おまえに泣かれることは……想定していない」


抱き寄せる腕が、そっと強くなる。
逃がさないためではない。
ようやく戻ってこられた居場所を、確かめるように。

病室がノックされた。
看護師が顔を出す。  

「!」

赤面しパッと離れる葵。
気にした様子もせず二人に近づく看護師。


「星野さん、佐竹さんの投薬のお時間です……あら! 意識を取り戻されたんですね!!」


目を開けている佐竹を確認し、看護師が驚きの声を上げた。


「先生を呼んできます! 投薬方法は変えますか?」

「あ、え!? えと、あの……」


葵は顔を更に真っ赤にし、声にならない声をあげた。


「?」


何も知らない佐竹は不審そうに眉を寄せる。


「……」


目を背ける葵。


「投薬方法とはなんだ」

「訊かないでくださいっ!!」


葵が目を合わさないまま遮ったその瞬間──
病室の扉がノックされ、白衣姿の医師が入ってきた。


「佐竹さん、意識が戻られたと聞きました。……よかった。本当に、よかった」


安堵したように微笑む医師。
看護師がタブレットを差し出す。


「先生、投薬方法の確認ですが……特別投与を継続しますか?」


佐竹の眉間が深く寄る。

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