暁に星の花を束ねて
「星野葵」

「ひゃ、ひゃいっ!」

「おまえは天才だ」

「へっ……!?」

「投薬時間が、待ち遠しくてたまらない」

「っ───!!!???」


葵は耳まで真っ赤に染めて固まった。


「な、ななななに云って……っ! あの、でも、怒らないんですか?」


段々、小声になる葵。
佐竹はその反応を静かに眺め、ふっと口元を緩めた。


「怒るわけがない」

「でも、でも!! その、コンプライアンスとか、モラルとか色々……!!」

「そうだな……」


佐竹は目を伏せ、低く続けた。


「おまえ以外の人間が、唇を奪い続けていたとあれば。跡形もなく、そいつを消していた」

「……!?」

「だが。星野葵がおれを助けるためにそうしたとあれば、云うことは何もない」


淡々とした口調なのに、どこか優しい温度があった。
その落差に胸の奥がきゅっと締め付けられる。


「……そんな……恥ずかしいこと……云わないでください……っ」


「云う。
おまえが命を繋いだ方法だ。
感謝も、期待も──する」


「きっ……期待!? 期待って何をですかっ」


佐竹は片眉を上げ、静かに目を細めた。


「それを、これから相談する。 
投薬は一生、必要になるんだろう?」

「〜〜ーーーーーっ!!!!!」



葵の叫びが病室に響く。



その隣では──
佐竹が救われたように深く息をつき、静かに呟く。


「おまえの反応が見られて、ようやく実感した。
……おれは生きているんだと」




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