暁に星の花を束ねて
『紅蓮院の逃亡でGQTは経営指揮を完全に失い、株価は暴落。
主要子会社も連鎖倒産寸前です』


速報画面を差し出しす。


「各国政府や国際監査院が、GQTの市場混乱を止めろと云っています」


片岡が補足する。

『理由は三つです。

巨大企業の崩壊は国際市場の混乱を招くこと。
ナノ兵器技術が無政府状態で流出する危険性。
GQTの量子貿易網の破綻は世界経済の打撃。

これらをあげています』


佐竹は短く息を吐いた。


「つまり、カグツチ未来交易戦略機構の保護。買収しろということか」

『はい。そうです。
各国はその方向で調整に入っています』


片岡が重く頷く。

『世界は火を呑める影を求めているのです』

葵は息を呑み、佐竹の横顔を見る。
その黒い瞳は、もう病人のものではなかった。


「少名彦CEOはなんと云ってるんだ」

『それが……。今回の凛翔のスキャンダルで理事会から退任を求められていまして……理事会は本日開かれます』


画面越しに片岡が云った。


『議題は二つです。
一、少名彦隼人CEOの責任追及と退任承認
二、次期CEOの選任』


病室の空気が、わずかに揺れた。

葵は息を呑み佐竹を見つめる。
白い病衣に包帯、浅い呼吸。
それでも彼の瞳だけが鋭かった。


「……後任候補は」
『複数名挙がっていますが……』


片岡は、一度言葉を切った。


『……最有力は、あなたです。佐竹部長』


葵の心臓が跳ねた。


「え……っ」

佐竹は、ほんの一瞬だけまぶたを閉じた。
そして、ゆっくりと視線を上げた。


「……皮肉だな。 拉致され、二度ナノ毒で死にかけた男を象徴に据えるのか」


佐竹は云ったが。
その表情に迷いはなかった。



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