暁に星の花を束ねて
父と子
公安留置施設・面会室
無機質な壁。
防弾ガラス越しに向き合う二つの椅子。
少名彦凛翔は、すでにCEOの息子ではなかった。
簡易拘束衣に身を包み手首には抑制バンド。
あれほど自信に満ちていた背筋は、どこか歪んでいる。
その向かいに座るのは少名彦隼人。
かつてスクナヒコナ・テクノロジーズを率いた男。
今日、彼はただの「父親」という立場でここにいるはずだった。
だが。
隼人は息子を見ることができなかった。
正確には……見ようとしなかった。
凛翔は、無意識に父の反応を待つような表情を浮かべている。
「……父さん」
沈黙を破ったのは、息子だった。
「ニュース、見たよ。
全部……佐竹のせいだって、世間は云ってる。
父さんなら、わかるよね?
あいつがどれだけ危険な男か──」
隼人は、ゆっくりと瞬きをした。
それは思考の時間ではない。
感情を切り離すための癖だった。
「凛翔」
低い声。
感情の温度が、ほとんどない。
「おまえは、佐竹蓮を排除すべき障害だと判断した。
違うか」
「……企業を守るためだ!」
凛翔の声が跳ねる。
「父さんだって、同じだっただろ!?
佐竹を危険視してた!
だから──だから、おれは……!」
隼人は、ようやく視線を上げ、
ガラス越しに凛翔を見た。
だがそこにあったのは慈愛ではない。
親が子を見る目でもなかった。
評価だ。
「失敗したな」
短く、切るように。
凛翔の呼吸が止まる。
胸の奥で、何かが落ちる音がした。
「計画は粗雑。
公安も、理事会も、世論も、甘く見すぎた」
「……それだけ?」
凛翔は震える声で笑おうとした。
「父さんは……おれが捕まっても、そんなことしか云わないのか?」
隼人は、静かに首を横に振った。
「違う」
隼人は、わずかに間を置いた。
「それ以上に、おまえは越えてはならない線を越えた」
無機質な壁。
防弾ガラス越しに向き合う二つの椅子。
少名彦凛翔は、すでにCEOの息子ではなかった。
簡易拘束衣に身を包み手首には抑制バンド。
あれほど自信に満ちていた背筋は、どこか歪んでいる。
その向かいに座るのは少名彦隼人。
かつてスクナヒコナ・テクノロジーズを率いた男。
今日、彼はただの「父親」という立場でここにいるはずだった。
だが。
隼人は息子を見ることができなかった。
正確には……見ようとしなかった。
凛翔は、無意識に父の反応を待つような表情を浮かべている。
「……父さん」
沈黙を破ったのは、息子だった。
「ニュース、見たよ。
全部……佐竹のせいだって、世間は云ってる。
父さんなら、わかるよね?
あいつがどれだけ危険な男か──」
隼人は、ゆっくりと瞬きをした。
それは思考の時間ではない。
感情を切り離すための癖だった。
「凛翔」
低い声。
感情の温度が、ほとんどない。
「おまえは、佐竹蓮を排除すべき障害だと判断した。
違うか」
「……企業を守るためだ!」
凛翔の声が跳ねる。
「父さんだって、同じだっただろ!?
佐竹を危険視してた!
だから──だから、おれは……!」
隼人は、ようやく視線を上げ、
ガラス越しに凛翔を見た。
だがそこにあったのは慈愛ではない。
親が子を見る目でもなかった。
評価だ。
「失敗したな」
短く、切るように。
凛翔の呼吸が止まる。
胸の奥で、何かが落ちる音がした。
「計画は粗雑。
公安も、理事会も、世論も、甘く見すぎた」
「……それだけ?」
凛翔は震える声で笑おうとした。
「父さんは……おれが捕まっても、そんなことしか云わないのか?」
隼人は、静かに首を横に振った。
「違う」
隼人は、わずかに間を置いた。
「それ以上に、おまえは越えてはならない線を越えた」