暁に星の花を束ねて
凛翔の瞳が、わずかに揺れる。

「企業権力を、私怨と劣等感で振り回した。
倫理も、戦略もない」

隼人は淡々と続けた。

「佐竹蓮は敵ではあった。
だが、彼は企業を壊さなかった。
おまえは──壊した」

「……っ」

「そして、その責任を父の影に隠そうとした」

その言葉で、凛翔の顔から血の気が引いた。

「父さん……助けてくれ」

初めて、凛翔は子どもの声で云った。

「おれは……! 父さんの後を継ぎたかっただけなんだ……」

隼人は立ち上がった。
面会終了の合図が灯る。


「凛翔」

背を向けたまま、云う。

「おまえは、私の息子だ」

一瞬、凛翔の顔が明るくなる。

だがその直後。


「だからこそ、私はもうおまえを守らない」


それは、父からの最後の宣告だった。

「……どうして」


震える問いに、隼人は振り返らない。


「理由がわからないなら、
おまえは最初からCEOにはなれない」


ドアが閉まる。

凛翔はガラスに手をつけたまま、声を失った。
その背後で記録装置が無機質に点灯する。


──少名彦隼人は、面会記録にこう残した。


「情状酌量を求めない。
本件は、SHTと私個人の責任ではなく、
凛翔自身の選択の結果である」



そして彼は自分が築いた後継者という幻想を、完全に切り捨てた。


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