暁に星の花を束ねて
第二議題

「次期CEO選任」

議長が言葉を続けた。


「では。次期CEO候補について。
現在、最有力とされている人物をお呼びしています」


ざわめく理事たち。

「まさか、この状況で来られるのか……」
「まだ重傷のはずだろう……」

誰もが、あり得ないと思っていた。

だが。

理事会室の扉が静かに開いた。

いつもの黒スーツに黒ネクタイ。
あの黒い手袋。

佐竹蓮が歩み入った。

歩行はわずかにぎこちないものの、彼の瞳は澄んだ刃のようだった。

息を呑む理事たち。
席につく佐竹。

議長が口を開く。

「佐竹部長。
この非常事態にお越しいただき、感謝します」

「社のためです。問題ありません」

重く落ちた声に、どよめきが走る。
議長が資料を読み上げる。


「次期CEO候補──戦略統括本部長、佐竹蓮」

「異議なし」
「支持する」
「この混乱を収められるのは彼しかいない」


次々に支持の声が上がる。
先ほど問いを投げた理事は、何も云わずに端末へ触れた。
その票もまた、承認だった。

その中で、一人の理事が手を挙げた。


「……率直に伺います、佐竹部長。
あなたはすでに二度、ナノ毒に倒れています。
次がない状態で、本当にこの巨大企業の舵を握れると
云えるのですか?」


静寂。

佐竹は顔を上げ、理事会の席を一人ずつ、静かに見渡した。
逃げる視線はなかった。

指先を胸に置く。

「はい」

その言葉は虚勢ではなかった。



「守るべき社員があり、背負うべき企業がある。
そして、残すわけにはいかない未来があります」



理事たちは、その一言で理解した。
彼が、この企業の最後の切り札であることを。

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