暁に星の花を束ねて

戦略部門という場所

──

「ねえ、かっこよかったよね、佐竹部長! 昨日の入社式、まるで映画の主人公みたいだった!」
「だよねだよね~! あんなイケメンが上司とか、ほんと幸せすぎる!」

(……そんなわけない)

少なくとも葵には、そうは思えなかった。

庭園でのあの横暴な態度。
暴言とも呼べる無礼な言葉の数々。

(みんな、騙されてる)

自分もあのスピーチに心を動かされかけた。
それが腹立たしくてたまらない。
葵はため息とともに、左胸の一輪花にそっと視線を落とした。

昼休みに入りロッカールームに戻ると、白衣を脱ぎハンガーにかける。

(うーん)

それでも、あの佐竹の所属する戦略部門とはどんな所なのか気になり、配布された社内オリエンテーション資料を開く。
薄く透明なホログラフィックフィルムに指先で触れると、目次がふわりと浮かび上がる。

(……戦略統括本部、SOH。ここね)

静かにそのページを開くと、無機質で冷ややかなフォントが規則正しく並んでいた。


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