暁に星の花を束ねて
「だってさ、あの佐竹部長ってば超有名人じゃん? みんな、もうファンクラブ作る勢いだよ?」

ぱちぱちと大きな瞳を瞬かせ、まるで珍獣でも目撃したかのように続ける。

「しかもね、ガーデンでバラと一緒に写真撮ったのもあるの! 見た? 社内誌に載ってたやつ!」

興奮気味に葵の腕を掴み、魅力的な体をぷるぷると揺らす結衣。

「ほらほら、あれって絶対わざとだよね? 氷の参謀とか呼ばれてるのに、やることがイケメンすぎるっていうかさ、反則っていうか……!」

本人は軽やかに見えて、その実力は折り紙付き。
研究者としての地力もあり人の懐に入るのがうまい。

(この子は、どんな場所も明るく照らしちゃうんだろうな)

その明るい声は葵の凝り固まった心に、春の陽だまりのような温もりを落としていった。

「そうだね」

葵は笑うと頷く。
彼女の明るさが心の棘を溶かしていくような気がした。

と、そのタイミングでルミナリウム・ガーデンの温室を臨む技術本部では、正午を告げる静かなチャイムが鳴り響く。

葵の配属先である生命環境調和部門・BEHにも、昼休憩を知らせる緩やかなざわめきが広がり始めていた。

ロッカールームにひとりの新入社員女性が、興奮した様子で飛び込んでくる。

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