暁に星の花を束ねて
「あの、佐竹部長」

匂いに違和感を感じながらも、それとは別に葵は話を切り出した。

「戦略部門の資料を見ました。部長の制服、唯一のものなんですね」

唐突な言葉に、佐竹はちらりと黒曜のような瞳を向けた。

「……そうだな」
「部門もすごく厳格で、統制が取れていて……」

言葉を探しながらも、葵は素直な感想を口にする。

「戦略企画課も、情報分析課も。それに『影班』……本当に軍隊みたいって思いました」

佐竹は小さく鼻で笑った。

「似たようなものだ。いや、それ以下かもしれん」

「それ以下?」

「軍隊は敵を倒すことに全力を尽くす。だが……」

佐竹はコーヒーカップを傾け、その底をじっと見つめた。

「我々は敵だけでなく、味方すら管理する。敵も味方も潰し合いだ」

冷えた声だった。
しかしそこには、どこか自嘲めいた響きも混じっている。

「昨日まで談笑してた隣の椅子が、今日には空席になってる。そんなことも当たり前の生臭い場所だ……花の刈り込みは社長が得意なんでな」

「それでも。会社を知りたいです」

葵ははっとした。
そんな言葉が出たことに、自分でも驚いた。

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