暁に星の花を束ねて
花に近づく者たち
展示会
「うわぁ……すごい……」
小さく息を呑んで、星野葵は足を止めた。
今日は白衣ではなく、柔らかなクリーム色のカーディガンに、ベージュのロングスカートという控えめな私服姿。
首からはSHTの来訪者バッジが揺れ、足元のパンプスがコツリと静かな音を立てる。
目の前に広がるバイオマターとナノファイバーの最前線。
どのブースも彼女の研究分野に直結しており、目を輝かせずにはいられなかった。
その隣には佐竹蓮の姿があった。
いつもの漆黒の黒スーツ姿に黒手袋。
葵は左腕に提げた薄型ショルダーバッグからICスキャナ端末を取り出すと、手慣れた動作でデータを読み込んでいく。
「佐竹部長、あの展示、見ましたか? フローラDNAを利用した環境適応皮膜なんて、すごく応用できそうです!」
つい先日のわだかまりも忘れ、葵は大興奮だ。
「……あれはカグツチ系のラボだ。データの信憑性にやや難がある」
「えっ、そうなんですか!」
「派手な色彩と誇張されたビジュアルを好むのは、あそこの常套手段だ。だが、発想自体は悪くない」
抑揚を抑えた冷静な声だが、まるで的確な道標のように葵の興奮を無駄なく誘導してくれる。
彼の隣にいるだけで見えるものが変わっていく気がした。
そんなふうに時折言葉を交わしながらも、二人は展示会場を一通り見て回った。
まるで偶然そこに並んだだけのように。
誰よりも自然に歩調を合わせながら。
小さく息を呑んで、星野葵は足を止めた。
今日は白衣ではなく、柔らかなクリーム色のカーディガンに、ベージュのロングスカートという控えめな私服姿。
首からはSHTの来訪者バッジが揺れ、足元のパンプスがコツリと静かな音を立てる。
目の前に広がるバイオマターとナノファイバーの最前線。
どのブースも彼女の研究分野に直結しており、目を輝かせずにはいられなかった。
その隣には佐竹蓮の姿があった。
いつもの漆黒の黒スーツ姿に黒手袋。
葵は左腕に提げた薄型ショルダーバッグからICスキャナ端末を取り出すと、手慣れた動作でデータを読み込んでいく。
「佐竹部長、あの展示、見ましたか? フローラDNAを利用した環境適応皮膜なんて、すごく応用できそうです!」
つい先日のわだかまりも忘れ、葵は大興奮だ。
「……あれはカグツチ系のラボだ。データの信憑性にやや難がある」
「えっ、そうなんですか!」
「派手な色彩と誇張されたビジュアルを好むのは、あそこの常套手段だ。だが、発想自体は悪くない」
抑揚を抑えた冷静な声だが、まるで的確な道標のように葵の興奮を無駄なく誘導してくれる。
彼の隣にいるだけで見えるものが変わっていく気がした。
そんなふうに時折言葉を交わしながらも、二人は展示会場を一通り見て回った。
まるで偶然そこに並んだだけのように。
誰よりも自然に歩調を合わせながら。