暁に星の花を束ねて
(……ほんとは……あの展示会でテロがあったなんて、云えるわけない)
笑う結衣の横顔を見ながら、葵は胸の奥に冷たいものを抱えていた。
爆発音、炎、迫る黒装束。
布で口を塞がれかけたあの感触。
ほんの数日前の出来事なのに、結衣の明るい声に触れると、自分だけ別の世界を生きているように思えてしまう。
(あの事件はニュースにはほとんど流れなかった。だから、何もなかった顔をしていなきゃいけない……)
「ねぇねぇ、ほんとに日焼け〜?」
結衣が再び覗き込むようにしてからかう。
「……そうだよっ」
葵は少し強めに返しながらも、胸の奥では言葉にできない秘密が燻り続けていた。