暁に星の花を束ねて
周囲はいわゆる名だたる難関エリート大学や大学院を修了した者、機関から転職してきた者ばかりであり、葵も一応、遺伝子工学大学は終えたものの、そこまでの研究をしていたわけではない彼女は肩を小さくさせていた。

 スクナヒコナテクノロジーズ(SHT)は、ナノマシン、生物兵器、クローニング技術を駆使し、世界経済の三分の一を掌握する巨大企業だ。
従業員数は約八十万人、資本金は三千億ドルに上り、メガシティ・トーキョーの高さ二キロを誇るネオタワーを本社として、世界をリードしている。

(きっとこの世界は、ここにいる人たちの手で動いていくんだろうな……)

自分にも、その端っこに立つ資格がほんの少しでもあるんだろうか……そんな考えが頭をよぎったとき、ふたたび佐竹の声が響いた。


「皆さんのような新入社員が当社の技術と未来を支える柱となっています。これから共にスクナヒコナテクノロジーズの名の下に、世界の進展を築きましょう」


その言葉は未来への扉をたたく音のように、葵の胸に響いた。

 
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