暁に星の花を束ねて
「佐竹さん、服の中はチクチクしたりしませんか?」

傷を確認しながらの自然な言葉だった。

薔薇の棘がシャツの内側に入り込んでいることは珍しくない。
放置すれば刺さったり肌を傷つけたりするので感染や炎症のもとになる。

彼女の声には焦りよりも冷静な確信があった。

何十本もの棘を処理してきた、自分なりの経験がそこにあったからだ。

「あとで服の中も払っておいてくださいね」

そう云ってから腕の治療を続けようとした、その瞬間。

佐竹がじっと葵を見つめている。

「……おれに脱げと?」

不意に返された言葉に、葵は目を見開く。

「えっ!?……ち、ちがっ……!」

動揺する彼女をよそに佐竹はすでにシャツのボタンに手をかけていた。
黒いシャツが肩から滑り落ち、露わになった肌に光が差す。

「きゃっ、佐竹さん……!」

思わず背を向けた葵の顔が、耳まで赤く染まる。

布の擦れる音や、わずかに立ち上る体温が、温室の静けさの中でやけに鮮明だった。

「いま人が来たら、おれの立場が危ういな」

皮肉めいたひと言に葵は抗議の声をあげることもできず、ただ震える声で

「し、しりませんっ!」

とだけ返した。

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