暁に星の花を束ねて
黒手袋の下
無機質な蛍光灯の光が、白い壁にうっすらと陰を落としていた。
応急処置室。
戦略部門の階層に設けられたその一角で、調和部門統括、馬渡遼は静かに包帯を巻いていた。
黒革の手袋を外された佐竹の右手。
その肌には薬莢が触れてできたはずの火傷だけでなく、どこか不自然な変化があった。
馬渡はそのことには触れない。
いつものように。
「……また、こんな無茶をして」
呆れた声のその下には、鈍く積もった憂慮があった。佐竹は目を伏せたまま短く返す。
「大したことはない」
「あなたには、その程度なんでしょうが……私に頼らざるをえない事態になるんですよ」
云いながら馬渡の手がぴたりと止まる。
包帯越しに、わずかに硬く沈まぬ部分があった。
「銃を撃てるような手ではないこと。自覚してください」
その声には静かな怒りが込められていた。
「動くからといって過信しすぎです。火傷だけならともかく、このままでは……」
言葉の先を濁しながらも、馬渡の目はまっすぐ佐竹の手を見ていた。