暁に星の花を束ねて


その横で、一歩控えていた暁烏が静かに前へ出る。

四十代前半、鋭利な刃のような輪郭を持つ顔は冷ややかで、薄い唇は常に無表情の線を描いている。

その瞳は感情の揺れを一切見せず、ただ周囲の隙を測り取るかのようだった。

「ネクサリア社において外交戦略顧問を務めております。本日は補佐役として同席させていただきます」

低く抑えられた声には無駄な抑揚がない。

それは礼儀を欠かぬ一方で、会議の場を交渉の戦場と心得ている者の声音だった。

暁烏の存在は、凛翔の若さを無謀と映させぬための鎧のようでもあると同時に、後方から動きを制御する影の手のようでもあった。

その一歩だけで空気が変わる。

重圧は声なき鎖となり、場の全員を無意識に縛りつける。

凛翔の言葉に威勢があっても、その背後に立つ暁烏の沈黙こそが、この場の真の力を物語っていた。

黒手袋を組んだまま、佐竹はわずかに口角を吊り上げる。

「……顧問か。ベンチャーに顧問を置くとはずいぶん豪勢だな」

皮肉を滲ませた声音。

暁烏の瞳が一瞬だけ揺らめいたが、すぐに氷のような無表情に戻る。

返答はない。

沈黙こそが彼の矜持であり、同時に最も鋭利な刃だった。

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