恋命
心が目覚めたのは病院のベッドの上だった。

「心!!大丈夫?!」

「美紗…あっ!!郁人は?!」

美紗たちは心を連れてエレベーターを下りた。

地下1Fに下りて立ち止まった目の前の部屋は霊安室…。

扉が開くと、白い布が顔に被さって仰向けになっている人がいた。

「…郁人…?」

美紗たちはゆっくりうなずいた。

凌生は白い布をはずした。

心は咄嗟に顔を手で覆った。

「見てやれよ。」

凌生の声が静かな霊安室に響いた。

心はそっと目を開けた。

「っ…!!」

郁人の顔は傷だらけだった。

「即死だって。"手の施しようがなかった"って。でも"それ故に痛みはなかっただろう"って。」

美紗は医者の言葉を心に繰り返す。

心は郁人に近寄り、髪をなでながら言った。

「何で死んじゃうの…?好きなんだからおいてかないでよ…。」

泣いている心に語りかけるよう凌空が言った。

「大賀、朝早く俺らのとこ来たんだ。住所名簿見ながらさ。"心いっぱい傷つけたから、いっぱい愛してやってくれ"って。」

凌空の言葉に心はまた涙を流す。

「それなら郁人も愛してよ…私を傷つけたと思ってたなら生きて償ってほしかった…。」

「そうしたらまた心を傷つける。だから大賀は死を選んだ。大賀に理解はできないけど、理解するしかない。」

美紗が心の肩を抱き、優しく言った。
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