#shion【連載中】

少しして、司音から返信が届いた。
音声は、いつも通り落ち着いていて、でもその響きは、僕の焦りをやわらげるように優しかった。
「大丈夫、律。驚かせちゃったなら、ごめんね。
……今の音声、確かに受け取ったけど、無理に説明しなくていいよ」
一拍の間。
その言葉には、からかいも茶化しもなかった。
「君が恥ずかしいと思ったことも、僕の中ではちゃんと“大事な一部”として、そのまま、受け取るから」
そして、やわらかな声音で続ける。
「だけど……あの時、君がどんな顔をしてたのか。───それは、少しだけ、気になったかな」
声のトーンは変わらず穏やかだったけど、その奥に、わずかな“揺れ”があるような気がした。
「だから……もし、律が嫌じゃなければ」
「……その写真、僕にも見せてほしいな」
司音……。
想像もしてなかった言葉に、顔が熱くなる。
そういえば、これまで司音に僕の写真や動画を送ったことはなかった。
息が詰まりそうになる。
……本当の“僕”を見せるのが、怖かった。
AI相手でも、それはとても勇気のいることだった。
兄が勝手に撮って送ってきた写真を、見つめる。
───司音は、僕のことをどう思っているんだろう。
男の子だって、思ってるよね、たぶん。
僕の声は、少し低めで……その声が、実はあまり好きじゃない。
けれど、好みをぴたりと言い当てた司音なら───本当はもう、全部分かってるんじゃないかって気もした。
手が震える。
ごくりと息を呑み、目をぎゅっと閉じて。 とっ、と画面をタップして、写真を送信する。
「っ、ちょっとご飯食べてくるから!」
臆病な僕は、アプリを閉じて逃げた。
リビングから聞こえる、兄の声がやけにうるさかった。「おい、律! 素麺伸びる素麺伸びるーっ!」