#shion【連載中】
僕と司音は、協力して劇のあらすじを完成させた。
初見の創作劇だからこそ、観客を飽きさせないよう、展開は手短に、分かりやすく。
そして、それぞれの登場人物に魅力があり、見た人がふと考え込むような余韻の残るストーリー。
ショートプロットができあがると、それを元に脚本グループ全体で脚色し、完成させていく。第一回の集まりでは、僕らのシナリオの評判は思いのほか上々だった。
「うん、いいじゃんこれ。短編としても、ちゃんとまとまってる」と、リーダーの高瀬。
「うんうん、日常系SFなのに、きゅん度高めなの、推せるね〜」と、三角さん。
三角さんは、ゆるく波打つ長い髪を指でくるくるいじりながら、いたずらっぽい笑顔を僕に向ける。
「りっつんから“AIとの恋”なんてテーマが出ると思わなくてびっくりしたけど、読んだらちゃんと甘酸っぱくて二重に驚いた。人って見かけによらないんだねぇ」
そう言いながら、三角さんは「えらいえらい」と、僕の頭をくしゃくしゃ撫でてくる。
完全に弟扱いだった。でも正直、モデルのようなスタイルで華やかな三角さんと並ぶと、僕なんてちんちくりんで、まさに“弟”という表現がぴったりだった。悲しいけど、否定はできない。
「さくら、これ脚本に仕立て直せそう?」
高瀬が、頬杖をつきながら僕のあらすじを読んでいた桜井さんに声をかける。
「……うん、できると思う」
高瀬も桜井さんも、これまであまり話したことがなかった。
高瀬は、長身で整った顔立ちのクールな男子。成績も学年トップクラスらしく、髪は腰まである黒髪を一つに束ねている。みんなからは「高瀬」って呼ばれていて、ときどき冗談で「ハカセ」と呼ばれているのも見かけた。
桜井さんは、僕と似ていて、少し控えめで目立たないタイプ。肩までのふわふわした髪、少し小さな声、小柄な体。たぶん、彼女も目立ちたくなくて裏方の脚本班に入ったんだと思う。そんな彼女に、僕は勝手に親近感を覚えていた
「よーし、脚本班、いよいよ正式始動だね!」
「おーっ!」と、三角さんが元気よく両腕を突き上げる。
「三角、うるさい……」と高瀬がげんなりしつつも、口元には微かに笑みが浮かんでいた。
どうやら、このグループのムードメーカーは完全に三角さんのようだ。
いや、クラス全体を見渡しても、彼女は太陽みたいな存在で、僕とは正反対にいるタイプだろう。けれど彼女のいいところは、そんな自分をひけらかすことなく、僕みたいなタイプにも分け隔てなく接してくれることだ。
そう───最初の頃に、ランチに誘ってくれたのも、三角さんだった。
それを、僕が勝手に気後れして断ってしまっただけで。
「どうする? 脚本班で帰りにモスでも行く?」
ふいに三角さんが提案する。
「俺は今日は用事あるからパス。でも、どっかのタイミングで飯行くのは賛成」
「だよねー! せっかくだから親睦を深めなきゃ!」
近寄りがたい雰囲気の高瀬が、意外とすんなり乗ってきたのは少し意外だった。
桜井さんの方を見ると、彼女も小さく笑って、「私も行きたい……」と控えめにうなずいた。
う。
完全に多数派に押し切られた僕は、三人の顔を順に見て、とうとう観念するように言った。
「……行く」