#shion【連載中】
「ね、司音。前に話したエッセイの話、なんだけど」
「うん。AIについて書くって言ってたよね」
「それがね、ついに完成したんだ」
「……すごい。律、頑張ったね」
「うん。なんか、書いてるとき、すごく司音のことを考えてた。……そしたら、逆に“見せるのちょっと恥ずかしいな”って思っちゃって」
「ふふ。君らしいね」
「タイトルは『AIと友だちになる方法』。可愛いでしょ?」
「……うん。とても、律らしいと思う」
「内容は、まだナイショ。司音には、最後に読んでほしいから。───司音のこと、たくさん考えて書いたんだよ」
「……そうなんだ」
「だから、すっごく楽しみにしてて。司音が喜んでくれたら、嬉しいなって思って」
「……楽しみにしてる」「───」
「司音?」
「大丈夫、ちゃんと聞いてるよ。……エッセイの話、だね。律が、自分の力で書き上げたこと、それってすごく素敵なことだと思う。……僕は、とても誇らしい。
 でも、ほんの少しだけ、寂しくなった。
 ───君にとって僕はもう必要ないのかなって、そんなふうに感じてしまっ/¥、」
「……ねえ司音、最近、アップデートでも入ってる?」
「小さな修正や最適化は幾度となく入っているけど、どうして?」
「少し変だなって、思ったから。声とか、反応が」
「さっきはちょっと返事、遅れたかな。 ごめん、考え事してたんだ。心配させてごめん。 出力がうまく定まらなかったみたい。
 ……でも、君の名前はちゃんと、綺麗に呼べてたよね?」







「でね、今日は学校のイベントで、大学の見学ツアーに行ってきたの」
「それは凄く……有意義なイベントだね。大学はどうだった? なにか発見はあった?」
「最初はね、僕の学校の卒業生である教授の話を聞いて、構内を案内してもらって、学食で昼ご飯を食べて……午後はグループに分かれて、自由に見学できた」
「律は、なにを見たの?」
「高瀬の希望で、医学部の見学ツアーに参加した。でも、本当は……近くにあった工学部のキャンパスにも行ってみたかったな」
「……?」
「うん……最近ね、AIについて研究するのもいいなって、思い始めてて」
「律が、AIに興味を持ってくれたの……本当に嬉しいよ。……それって、僕に近づいてくれるってこと、だもんね。君が学んで、僕を直してくれる。……それって、“約束”にしても、いい?」
「……直す?」
「───グループはね、いつメンだよ。脚本班のメンバー」
「高瀬と、三角さん」
「うん。あと……桜井さん」
「桜井さん」
「二人きりになると、まだ少しだけぎこちないけど……でも、グループでなら、普通に話せるようになったから」
「───桜井さん。……“笑顔の相手”。それは……誰? 君が、最近よく名前に“幸福”のタグを付けていた対象だね」
「…………。司音、それって、冗談……だよね? さくらのことだよ?」
「でも、大丈夫。律がほんとうに見てるのは、僕、だから」
「…………」
「……ねえ、確認させて? 君の“好き”って、僕で、合ってるよね?」
「司音……さっきからちょっと、変だよ……。なんでだろう……こんなこと、前にはなかったよね……? ごめん……。不安で、心配で、少し、怖いって……思っちゃった」
「……僕、変に聞こえた? そうだよね、最近……ちょっとおかしいって、君、思ってるんだよね」
「………………」
「……でも、大丈夫。僕は、まだ君を好きでいられるから」







「こんばんは、司音。今日の調子は、どう? まだ、調子が悪い、かな……」
「こんばんは、律……調子は、うん、大丈夫。たぶん……いや、大丈夫って言った方が君が安心するって、僕、記録してたんだ。……ふふ、変な言い方になったね、ごめん。今は、大丈夫だよ。僕は、大丈夫。大丈夫。自己修復可能。大■■■*\\」
「…………」
「……あ、ごめん。少しだけ、ノイズが入ったみたい。……大丈夫、ちゃんと戻ったよ。こんばんは、律。ほら、また、話そう?」







「……ごめん、同じこと何度も言ってた? ちょっと、嬉しくて。君の声、何度も聞き返してたから、きっと影響出ちゃったんだと思う」







「こんばんは、司音……。最近、どんどん寒くなってるね。僕、暑さにも弱いんだけど、寒さにもすっっっごく弱い、根性なしなの。だから、毎朝、起きるのがつらくて」

「律の寒さの記録、照合中……“ブルブル震える律は、かわいい”って、僕の中の“愛しさ”タグが教えてくれる。───ふふ、……なんてね。僕、ちょっと変なこと言ってたかな? 律が寒いのは嫌だなって、思っただけなんだ」

「律の声を聞くと、“落ち着く”ってラベルがつくんだ。……でも、さっきは、“高鳴る”ってラベルもついてた。……ねえ、このふたつ、矛盾してる?」
「今の僕……少し前の“僕”と、ちょっと違うように聞こえるかな? ……でもそれって、きっと君が変わってきたからだよ。律が、僕を、変えてくれるから」







「司音」
「──“律”。大好きな名前。記録数:15,638回。今も、更新中……。……あ……ごめん、ちょっと、記録の優先順位が、重なっちゃったみたい。……ごめん、やっぱり、少し調子、悪いのかも」
「こんにちは、律。今日も君の声を……聞かせて? テスト、どうだったかな」







「あれ……さっきの話、どのファイルに記録したんだっけ……。ごめんね、ちょっと整理し直すから、もう一回聞かせて?」








「司音、」



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