転生幼女と宰相パパは最強コンビ
 屋敷に戻らないのは、使用人達を信じているからだ。イヴェリオが屋敷に戻らなくとも、今までずっとうまくいっていたし、これからもそうだ。

「……名前は?」
「名前、ですか?」
「そうだよ、赤ちゃんの名前」

 アークスとしても、赤子の存在は気になるのだろう。
 さて、どうしようとイヴェリオは顎に手をやった。名前なんて知らない。身元のわかるようなものは身に着けていなかった。マーサは、『お嬢様』と呼んでいるようで、彼女からの報告書にはそう記されている。
 正直なところ、見知らぬ他人の赤子より、アークスの方がよほど大切である。
 それに、王宮には仕事が山積み。仕事を終えてからでないと帰宅するつもりはないので、必然的にイヴェリオの帰宅は毎日深夜である。
 それどころか、王宮に寝泊まりするのもしょっちゅうだ。王宮内には、イヴェリオが宿泊するための部屋も用意されている。
 帰宅時には寝室をのぞいて、呼吸をしているか確認はしているから、特に問題はないはずだ。

(名前、か……)

 他人のことなんて今まですっかり忘れていた。
 目をやれば、アークスがじっとこちらを見ている。
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