転生幼女と宰相パパは最強コンビ
 もしかして、信じてもらえなかっただろうか。もし、前世の記憶があるなんて言われたら、リリカだって信じられないだろう。

(……言わない方がよかったかな)

 この世界には、魔術がある。だから、前世の記憶のような普通なら考えられない出来事も信じてもらえるのではないかと考えていた。
 でも、もしそれがリリカの思い込みだったなら。
 不安になったリリカの表情に、イヴェリオはすぐに気づいたようだ。リリカの頭に手を置く。

「話してくれてありがとう。君の言葉を信じていないわけではない。だが、これからどうしたものかと考えてしまってね」
「……どうちたものか?」
「ああ。これからどうするのが君にとって一番いいのか……それを考えるのは私の仕事だ。さあ、そろそろ入浴の時間だろう。マーサと一緒に行くんだ」
「あい、パパ。おやしゅみなさいましぇ」

 ずり落ちるようにしてソファから下り、イヴェリオにぴょこんと頭を下げる。それから、部屋の隅に控えていたマーサのところにとてとてと近寄る。

「リリカ」

 不意に名前を呼ばれて振り返った。イヴェリオは、じっとこちらを見ている。

「おやすみ、いい夢を」
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